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不登校の理由 〜オフィシャルの理由1つと、僕の思う理由3つ〜

不登校の理由って、ぶっちゃけコレ。

らしい。

 

不登校の理由

子どもが不登校になる。

すると大人は、その原因を探ろうとする。

 

そりゃそうだ。

理由がわからなければ対策の立てようがない。

 

 

不登校の理由。

「人による」と言えば、まぁ、そりゃそうなんだけど。

いじめとかODとか発達とか家庭とか先生とか勉強とか経済的にとか、いろんな理由があるんだけどさ。

それだと話が進まないから。

 

個別事例じゃなくて、もっとこう、数の暴力でさ。

全体の傾向を取りまとめた、信頼できるオフィシャルな情報ないの?

 

ってことで。

ありましたよ。

天下の文部科学省の情報が。

数字、キッチリ出してくれてる。

 

教師対象調査において、令和4年度問題行動等調査で不登校の主たる要因について回答のあった1,357名の回答のうち、その要因が「無気力・不安」であったものは750名(55.3%)であった。

 

↓ソースはこれの23ページ。

https://www.mext.go.jp/content/20231004-mxt_jidou01-100002753_2.pdf

 

 

へー。

圧倒的に「無気力・不安」が多いのだ。

 

いじめ(0.2%)とか先生とのトラブル(1.2%)なんかは、イメージほど多くない。

学業の不振(4.9%)も然り。

圧倒的に、「無気力・不安」だ。

※ただしこの数字は教員への聞き取りによる。不登校児本人に聞くと、また違った答えが返ってくる可能性はあります。

 

 

コレ、僕の臨床実感とも一致する。

いじめが理由の不登校って多くない。

特定の誰か(先生や友達)とのトラブルも、やっぱり多くない。

これらの理由だと、問題解決やクラス替えで再度登校できるようになるからだ。

長期化せず、大きな問題になりにくい。

 

多いのは、「無気力・不安」。

うん、そう。

他によく聞くのは、体調不良(頭痛・腹痛・不眠・倦怠感なんかの不定愁訴)や感覚過敏、学校の仕組み自体への不適応なんか。

つまり、「解決できない類のヤツ」だ。

コレが多い。

 

 

まとめると、不登校の理由は

①フワッとした理由 (例:無気力・不安・イライラ。「なんか怖い」とか。)

→具体的でないので解決が困難。

②個人の感覚 (例:頭痛・腹痛・聴覚過敏・ODなど。「頭痛さえなくなれば学校に行けるのに」とか)。

→痛みや不快感は感じ方に個人差があり、ゼロにするのは難しい。

③本人にもわからない (例:行きたい、明日は行く、とは言うものの、実際は行かない。)

→「行きたい」と「行くべき」の区別がついていないものと思われる。

のいずれかで、全体の90%を占める。(僕調べ)

 

あとは本人が「断固行かない」という強い意志を持っているケースだが、これはあまり相談に来ないし問題にならない。

本人の人生だ、受け入れるしかない。

情報提供や説得は試みるけどネ。多分聞かないからサ。

 

「無気力・不安」

実際そうだ。

不登校の理由として、不安や無気力を訴える子は非常に多い。

 

じゃあ解決しようって話になるのだが。

物事はそう簡単じゃない。

 

 

「無気力・不安」の解決にあたり、

「無気力・不安」になった理由

があるハズなのだ。

 

それまで元気だった子が、理由なく、ある日突然「無気力・不安」になるって考えづらい。

不登校の子 = 偶然なんか「無気力・不安」になった子

ではないハズだ。

 

そうなった理由があるだろうし、もしかしたら不登校になった結果が「無気力・不安」なのかもしれない。

「無気力・不安」は、原因じゃなくてあくまで結果って可能性ね。

 

 

だから単純に「無気力・不安」を解除すれば明日から元気に登校するゼ⭐︎ って話ではない。

無気力な子を元気づけ、不安な子を安心させたところで、効果は薄いのである。

 

そう考えると確かに、強い登校刺激って危うい。

その行動が、吉と出るか凶と出るか。

 

クラスみんなで「早く学校に来てね」のお手紙も、有効性は限定的だろう。

むしろ余計に追い詰める可能性が高そうだ。

 

僕……昔やっちゃった(やらされた)なぁ……。

案の定、彼、来なかったし……。

 

不登校の理由:僕の解釈モデル

不登校の理由として、「無気力・不安」は大きい。

これに異論はない。

ただ、そうなった背景があると考える。

 

よって

不登校の理由は「無気力・不安」である。ビシッ!!

と結論づけたところで、あまり意味がない。

その「無気力・不安」に陥った理由が、真の不登校の理由だからだ。

 

 

こう考えると、不登校の理由を探ることに、あまり意味はないのかもしれない。

探ったところで的を得た答えが得られないケースが多そうだ。

 

不登校の理由、僕は一応聞くけどさ。

解決できることなら、するけどさー。(環境調整とか逃げ場の準備とか先の見通しを示すとか)

でも、これで解決! 一件落着! ってケースはあまりお目にかからないからさ。

 

 

やっぱり、不登校に至るにはそれなりの理由があって。

単一の要因ではなく、種々の要素が複雑に絡み合っているのだろう。

中でも、持って生まれた「玉」の影響が一番大きいんじゃなかろうか。

 

「玉」の上に、養育環境(家庭)が乗っかり。

その上に学校での経験が乗っかり。

枝葉のように色々な出来事があって。

紆余曲折あって、至った表現系が、この子の場合「不登校」だったってイメージを僕は持っている。

 

 

この子は不登校になったけど、似たような状況の別の子は、大人になって精神疾患を発症するかもしれない。

この子だって、今の表現は不登校だけど、この先どうなるかはわからない。

↑こんなモデルで考えている。

 

だから、「不登校の原因」って突き詰めてもあんまり意味ないんじゃないかと。

ってゆーか多分、本質的にクリアカットな表現はできない事柄なのだろうと思う。

 

 

そして、

不登校の素因は就学前にその半分以上が規定されている

というのも、あながち間違いじゃないんじゃないかと思う。

不登校って、入学前にはその素地が出来ているんじゃないか。

 

そもそもの「玉」があり、そこに養育環境が乗っかった上で入学する。

不登校になりやすい素地は、幼児期にすでにある程度完成しているのではないか。

 

もちろん、これは別に悪いことじゃなくて。

これはこれで良い。

というか、こんなの良い・悪いの問題ではない。

「そういう人」ってだけで、じゃあどうするかって話だ。

それだけ。

 

で、就学以降に顕在化し、この子の場合は「不登校」に至った。

 

↑これだけ。

 

まとめ

不登校の理由。

みなさん気にされるところだろう。

 

だけど僕は、こんなモデルで考えている。

クリアカットに、原因を取り除けば解決する、という問題ではないのだろう。

僕はそう思う。

pediatrician-p

View Comments

  • P先生の記事、今回自分にとってタイムリーで、ありがとうございます。

    つい先日、その不登校のオフィシャルな理由について、再登校支援の代表の方の話がニュース記事にあり(不登校とあらば何でも条件反射で読みます…)

    その無気力…等が原因の背景には、『正しい親子関係が築けてない〜お父さんお母さんからの愛情をうまく受け取れていないことによる自己肯定感の低下がある』と書かれていて。

    いろいろな考えがあることも承知しながら、我が家も父子関係にもかなり問題あったので、もっと自己肯定感を高めるように接していたら、不登校にはならへんかったんやろかなぁと。。つい省みておりました。

    先生の今回記事で、元来の玉の上に生育環境やその後の経験やイベント等も大きく関わった上で、たまたま不登校という矢印となって現れてという今回の記事を読んで、ほんとにそうだなぁと改めて考えました。

    生育環境が違ってたとしても不登校以外の形で現れたかも知れないけど、玉をよく見て!を知った今の自分ならもっと違う接し方できたかなぁとか、時を遡りたい気持ちにもなりました(後ろ向き過ぎる…(-_-;))

  • いつも参考にさせていただいております
    中学不登校から通信制高校1年の娘が無気力,不安、体調不良に悩まされております
    今現在も,週3通学コースを選んだものの,なかなか思うように登校出来ません

    幼稚園の頃から,先生が宿題を3つ言ったうちの1つを何か忘れたから行きたくない。と通園を拒む事があったり、折り紙が上手に出来ないからなど,今考えると要素ありまくりでした
    しかし,小学校は自分を騙し騙し登校していたんだと思いますが、私もきちんと理解をしていなかった為に対応を間違えてしまい、エネルギー不足になって行ったように思います

    戻れるなら,幼少期から子育てやり直したいな

  • まさに、そうですよね。
    まだ7歳で、これから先どうするか先行き長いです。
    スモールステップで登校していますが、学校システムが合わず、こぼれ落ちた子専用の学校がないかなと。(不登校特例校、フリースクール、オルタナティブスクールなど探していますが…)

    「じゃあ、どうするか」まさにここで悪戦苦闘中です…
    色々試して流れに乗ったり、押したり引いたりしていて、毎日忙しいです(笑)

  • まさに、そうですよね。
    まだ7歳で、これから先どうするか先行き長いです。
    スモールステップで登校していますが、学校システムが合わず、こぼれ落ちた子専用の学校がないかなと。(不登校特例校、フリースクール、オルタナティブスクールなど探していますが…)

    「じゃあ、どうするか」まさにここで悪戦苦闘中です…
    色々試して流れに乗ったり、押したり引いたりしていて、毎日忙しいです(笑)

  • 「持って生まれた「玉」の影響が一番大きい」
    「不登校って、入学前にはその素地が出来ているんじゃないか。」
    本当に…まさに…

    息子が不登校になったのは決して、思春期のアイデンティティの確立に失敗したのでもなく、ケガで同級生にいじられたことをいじめととらえたからでもなく、それによって人間不信に陥ったのでもなく
    「そもそも保育園時代から周囲を気にしいの気質(HSC)だったのなら、遅かれ早かれぶち当たっていたのではないか」に至りました
    スッキリ……?
    HSCという言葉は不登校になってから知りました。
    いろいろ生きづらかったと思いますが、HSCには良いところもある。受け入れて、良い方に大いに伸びてもらうことを願っています。

  • 持って生まれた「玉」の影響が一番大きい
    本当にこれだと思います
    きっかけは部活の顧問に叱責された事でしたが、それがあふれそうなコップに注がれた最後の一滴だったのかなと
    玉と環境のマッチングがうまく行かなかったんだろうな

    中学時代に1年半の完全不登校でゆっくり休み、今は登校型通信制の高校1年生になり毎日登校しています
    不登校は自分にとって必要だったと本人の口からポロっと出た言葉にものすごい成長を感じました

  • P先生の考察、そのとおりだと感じました。
    「無気力・不安」に陥った理由が、真の不登校の理由であり、それは本人が持って生まれた「玉」の影響が多い。そしてそれは就学前にはすでに出来上がっていると。

    中3息子は不登校歴4年ですが、それまでは元気で何でもそつなくこなし、友だちや勉強面でも問題ない子でした。でもそれは周りから見た彼であって、知らず知らずのうちに無理が積み重なっていたのかもしれません。コップが満タンに近づいていた時に、コロナ禍や、皆の前で恥をかくような出来事がたまたま重なり、動けなくなりました。

    保育園時代を振り返ると、やはり今と気質は変わりませんね。得意な事以外はやりたくない(完璧主義?)、神経質、周りを観察しすぎるようなところがありました。

    親として心配するのは、大人になって精神疾患を発症することです。そのために今できることは、学校に行かなくてもいいから、社会で生きていくために、どうやって自分の気持ちと折り合いをつけていくのかを少しずつ学んでもらうことかなと思っています。

  • 中学で不登校を経験し、今は元気に登校中の高校生息子がいます。
    学校の仕組み自体への不適応、まさにそれが原因での不安から、不登校になったのだろうなぁと今ではわかります。登校刺激を諦めて、たっぷりおうち時間を過ごし。少しずつ自分ペースで登校しながら卒業を迎えました。黒歴史(本人いわく)から脱出し、心機一転なんてうまくいくのか?と思いましたが、こちらの心配をよそにみるみる元気になりました。特性や不登校に配慮した学校を選んだことで、不登校という少数派だった自分→みんな何かしら経験してる!となったことが、大きかったと思います。持って生まれた玉は変えられないけれど、本人の成長待ちみたいなところもあって、今はだいぶいろんな適応が出来るようになってきました。不登校は親子にとって通過点となりつつある今日この頃です。

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pediatrician-p

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