子どもは、大人ではない。
大人とは違う。
では、具体的に何がどう違うのだろう。
子どもは、どうやって大人になっていくのだろう。
子どもと大人の違いはなにか。
どうやって、子どもは大人になるか。
ふむ。
哲学的な問いだ。
公共の場でデカい声で
Bling-Bang-Bang-Born!!!
って言わなくなったら?
エンドレスで
ちぴちぴチャパチャパ
歌わなくなったら?
ある意味、それは非常に正しい。
僕もこれを推したいところだ。
この定義でいくと、僕はまだまだ子どもに分類されることになる。
診察室で、みんな歌うんだもん。
どうしても耳に残るんだもん。
脳内リピートされ、無意識に口ずさんでる。
だが、ここは理論のブログだ。
僕は、バリバリの理系である。
もう少し理論的に説明させていただきたい。
結論から言おう。
大人になるということ。
それは、コレが↓
こうなることだ。↓
どういうこと?
具体物が、シンプルに抽象化して知覚されるってこと。
情報の刈り込みが行われる。
たくさんの情報から、必要なもののみを知覚し、適切な状況判断を行う。
情報量を減らし、社会に適合した判断を下す。
例えば、上の道の図でいうとこうだ。
道、ですよね。
道、なんだけど。
実際の道、現実に目の前にある『道』には、たくさんの情報がある。
一口に道と言っても、コンクリートの凸凹や、道端の小石、草の背丈や種類、それぞれ違っている。
気温、天気、季節。
雲の形や動き。
匂い、風、車、歩行者。
あ、あそこに友達のケンちゃんが歩いてる!
数多の情報がそこには存在する。
これが、大人になるに従い、つまり情報に『慣れる』に従い、シンプルに知覚される。
情報が刈り込まれる。
記号的な道と、空と、木。
至極シンプルな、上記イラスト様になる。
そこにある数多の情報。
これ、実生活では不要だったりする。
小石があるとか花が咲いてるとかさ。
不必要な、過剰な情報だ。
必要なのは、道の把握と、危険の有無くらい。
毎日通る道なんて、大人にはこのくらいシンプルに知覚されているのかもしれない。↓
これが、効率がよいのだ。
情報を刈り込んで、素早く処理する。
これが大人の情報処理だ。
子どもは、この処理ができない。
世界を、情報量多く知覚する。
小石、ぺんぺん草、水溜り、道路標識、道ゆく人……。
みんなちゃんと感知する。
これが子どもの感覚だ。
だもんで、逆に重要な情報を見逃す。
効率が悪いのだ。
実際、そうらしい。
子どもは、情報を処理する回路が多いらしいのだ。
赤ちゃんなんて特に、情報を伝達する回路がめっちゃ多い。
刺激を受けると、回路が次々つながっていく。
生後7ヶ月頃にその数がピークとなるそうだ。
これが成長するに従い、減っていく。
使われないシナプスが死んでいく。
これはネガティブなことではなく、むしろ有利に働く。
不要な回路を捨て、よく使う回路を強化する。
これにより、身体はスムーズに動き、判断も的確になる。
何もできなかった赤ちゃんが、歩くようになり、手先が器用になり、言葉を喋り、社会性を獲得する。
情報を刈り込んで、シンプルに知覚するようになるからできることだ。
↑コレね。
コレが、大人になるってこと。
とある作業を、素人と職人に行わせ、脳の働きをMRIで調べた研究があった。(詳細は失念)
すると素人は、脳のあちこちが活性化する。
慣れた人や職人は、特定の部位のみが活性化したそうだ。
無駄なく、シンプルに、効率よく情報を処理する。
赤ちゃんは回路が多く、大人は少ないのと同じだ。
つまり、上手になる、成長するとは、
不要な回路を断ち切り、必要な回路を強化すること
である。
うまく伝わったかな?
説明難しい。
結局、大人になるとは、
コレが↓
こうなる↓
ってことだ。
子どもは、情報量が多い。
多すぎる。
それゆえ、困ることが出てくる。
常にたくさんの刺激にさらされている。
気が散る、落ち着かない。
何もかもが新鮮で。
何をするにも時間がかかる。
子どもってそうじゃん?
多動だし不注意だし、落ちつかないし効率悪いじゃん?
理解できない行動の理由。
大人とは、見ている景色が違うのだ。
子どもにとって、世界は情報の宝庫だ。
余談だけど、発達障害児は特にそうのようだ。
ADHDの脳を調べると、定型発達児より回路が多かったらしい。
回路が刈り込まれてないんだって。
子どもの中でも特に情報が多く、気が散りやすい。
きっとASDも似たようなものだろう。
回路が多く刺激過多のため、他児と違う行動をとり、困ったことになる。
情報がスルーされないので、グレーが通用しない。
情報が多すぎて、疲れやすく、長時間の睡眠を要する。
でも、他児にはない瑞々しい視点で物事を捉える。
大人にはまったく想像もつかないことを、言ったりやったりする。
素敵な面がたくさんある。
たくさんの情報をうまく刈り込み、「一般的なテンプレート」に当てはめるのが、大人になるってこと。
必要な情報に注目し、素早く的確な判断を下すってことだ。
↑この視界なら、『異物』にすぐ気づけそうだもの。
いつもと違うことや危険な状況なんかを察知しやすい。
これだけシンプルなら、自分以外の人とも情報を共有しやすいだろう。
シンプルに抽象化する。
すると、情報は処理しやすい。
地図なんか、まさにその典型だよね。
そして子どもって、地図見ないものね。
このような知覚じゃないんだろうなぁ。↓
そしてそして。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)ってまさにこの作業だと思う。
「一般にはこう捉える」を教える。
注目すべき情報、スルーすべき情報を、教え込む。
情報の刈り込み、選別。
必要な回路の強化。
「社会性の獲得」、大人になるって、こういうことだ。
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アラフィフ主婦です
我が子が不登校になり、P先生の記事に辿りつき、読み始めましたが
ADHDの記事を見てると
あれ?これ、私?と、思うこと多々
昔から
周りの同世代ができることが全然できない
できたとしてもめっちゃ
時間かかるし気が散るし
でも
物心ついてから退屈したことなくて
この世界にはいつもワクワクしています
自分、まだ子供なのか…
我が子に関しては
特性あるな、仕方ないな、本人のペースで社会に合流できたらいいなという心境でいられるようになりました
自分に関しては
御縁と巡り合わせでなんとかこのままでもいい環境を手に入れているので
このまま逃げ切りたいと思います(笑)
これからも記事、楽しみにしております
昔色んな景色に感動したのが歳を取るほど感動しなくなったのも、写真が地図になったからなんですかね?とふと思いました。
なるほどー!納得です!!
小1の妹(未診断)はまさに子ども。
道端の花に話しかけ、段差は必ず登り、いまだにまっすぐ歩けない(汗)。
衝動性もあると思うのですが、ご飯を食べていても思いついたら突然制作が始まったり、大人の会話から連想して自分が話したい話題をぶっ込んできたり。
中3の兄(ADHD.ASD.LD)は、妹のそんな子どもな部分が受け入れられないんですよね。
なんでそんなことをするのか、理解できないみたいで、脅してやめさせようとしたり、ひどい言葉で罵ったり、妹のことを全否定するようなことを言ったり…。
自分もずーーーーっとそうだったくせに!なんです。(っていうか兄のほうが子どもっぷりはひどかった(^_^;))
自分も同じことをしていたんだから、むしろそうしたくなる気持ちを理解できるんじゃないの!?といつも疑問だったんですが、兄は大人になったんですねー。
見え方がちがうんですねー。
確かに、昔に比べて刺激は受けにくくなったのかなーと思います。
大人になって子どもの言動を受け入れられるかどうかはまた別問題だと思いますが『大人になった』のだと思うと兄の態度もちょっとわかるような…。
(いや、妹への暴言は許せないですが(-_-))
もう少し年を重ねれば“子どもってそういうもんなんだ”と思えるようになってくれるのかな。
ADHDだと最近発覚して、ストラテラを飲み始めて1ヶ月経つ26歳女です。
いつも拝読していて共感することが多いですが、この記事はその中でもトップレベルにそれな!って感じです。
ストラテラ服用後過眠が解消して物事の効率は高くなって、WAISを受けたら以前より知覚推理が15上がっていました。社会性も絶対上がってます。
周りから見たら本当に良くなったんだと思いますが、何も楽しくない。ワクワクしない。以前より笑顔が減ってます。
頭の落ち着きがなさすぎて、物事を簡単にすることができなかったんでしょう。
この記事を読んで、「大人になると笑顔が減る」って、昔グリコのCMで妻夫木くんが言ってたのを思い出しました。
そうか、私は大人になったのか。
今回の記事、私と子供達にすごく当てはまる
主人が子供達の悩みを理解できないのはこれだ
主人はもうすっかり大人
必要な情報だけしっかり切り取ってる
職人から素人へは戻らない
すっごい納得