ASDは、空気が読めない。
人のことは気にしない。
マイペース。
マイワールド。
典型的にはそうなんだけど、そんなことないASDも、やっぱりいると思う。
ASD。
空気が読めないというのは、広く知られている特徴だろう。
人の気持ちがわからない。
他者に興味が薄い。
マイペースで空気が読めない。
「自閉」という言葉は、おそらくこの特性から来ている。
一般的にはそう。
この特性の強い子は、どこに行ってもおそらくASDと診断される。 ※例外あり。別の原因から自閉的になることもあります。
だけど、じゃあ「空気が読める子はASDではない」のか。
これ、実は言い切れないのだ。
ASDの簡易チェックリスト的なやつでも、「空気が読めない」「人に興味がない」といった項目がある。
目が合わないとか、名前を呼んでも反応しないとかね。
ASDじゃないってこと?
いや、そうとは限らない。
ASDの中に、一定数、空気を読む子がいる。
一定数。
想像よりずっと多くの割合で。
空気を読むASD。
ヘタだけど。
ムラがあるけど。
でも、空気を読もうとするし、実際読めている場面も多い。
このような人たちを、以前はアスペルガーと呼んだ。
今はまとめてASD、自閉「スペクトラム」だ。
こんな子がいました。
ASDの子。
幼児。
基本的にはマイペースで、コミュニケーションも苦手。
ASDだもの。
でも、家族が険悪なムードになったとき、いち早く気づく。
明らかに落ち着かなくなったり。
わざと騒いで自分に注意を向けさせたり。
「ケンカはやめて」としょんぼりしたり。
その感度たるや、相当なもので。
この子は知らないし、普通に接しているのに、明らかに落ち着きませんでした。
ケンカを察知し、普段とは明らかに態度が変わる。
そわそわ挙動不審となる。
わざとおちゃらけて、空気を変えようとする。
不安に押しつぶされそうな顔で、じっと様子を伺っている。
まさに「空気を読んでいる」。
アレ、この子、ASDなのに?
こんな子もいました。
ASDの子。
中学生の女の子。
友達関係が複雑になってくる年頃だ。
ASDの苦手なシチュエーション。
この子はASDなので、『女子の仲良しグループ』には真に溶け込めてはいない。
ちょっと浮いちゃってる。
だけど、浮いちゃいけないってことはわかっている。
輪を乱さないことが、グループの絶対の掟だ。
この子は知識として、これしなきゃハブられるって「お作法」を、いくつか知っている。
だもんで、知っている「お作法」を必死に守ろうとする。
そりゃもう、必要以上に必死に。
ベースASDなので、0か100かの極端な思考だ。
極端すぎて、「こだわり」に昇華しちゃってるんじゃ? と思うこともしばしば。
※実際、極端にやりすぎて余計に浮いちゃうことも。悪口大会に参加したら言いすぎちゃって他の子に引かれたり、いじめ問題にまで発展したり。「即レス絶対」の掟を他の子にも強要し、トラブルになったり。
その割に、「え、こっちはお留守なの?」ってところがある。
バランス悪いし、だからちょっと浮いちゃうんだけど。
まぁ、ASDだし。
すげー頑張ってるよ、この子。
でね。
中途半端に空気が読めるもんで、グループ内が険悪になると察知する。
それに対し、必死で対応しようとする。
焦って地雷を踏み抜くこともあれば、案外うまい具合に着地することも。
この子は、複雑な人間関係になんとか適応しようと必死だ。
ぐったり疲れちゃう。
ASDの過剰適応
あると思う。
ASDなのに、過剰適応?
実際、結構あると思うんだ。
ASDがみんな空気を読まないとは、全然決まっていない。
僕の出会ったASDの子たち。
思いの外、空気を読む。
うまく読めていなくても、バランス悪くても、少なくとも読もうとする姿勢は見せる。
「いつもと違う空気」を察知する。
ASDでも、察知するのだ。
考えてみたら当然か。
ASDは、「いつもと違う」に敏感だ。
全く空気を読まない子もいる。
こんな子は、はっきりASDとわかりやすいだろう。
でも、多くのASDは、空気を読む。
読もうとする。
想像よりずっと多くのASDが、周囲を見て、対人関係に気を使っている。
ズレてるけど、バランス悪いけど、でも、空気を読む。
読もうとする。
空気を読まないASDより、部分的にでも読むASDの方が、僕の体感的には多い。
「ASDは空気を読まない」とは、全然言い切れない。
むしろ、
ヘタなのに空気を読もうと頑張って、ぐったり疲れてかんしゃくを起こす。
↑コッチの方が、実際のASDの姿に近いように思う。
最後に。
僕にはASD特性があるのだが、僕は空気を読むASDだ。
みなさんの「最後はボケて落としてほしい」という要望を、たった今、敏感に察知した。
「ASDの姿に」とタイピングしようとして変換キーを押したら
「ASDの菅谷」
って出た。
ちょっ。
誰だよ菅谷wwwww
…………対応を間違えたようだ。
どうやら僕は、空気の読めないASDだ。
View Comments
いつもありがとうございます!
「空気」2種類あるように思います。
私も子供も、ASD傾向があると思いますが、他人の機嫌や体調(勝手に一つ目としてみます)には、とても敏感です。一方で、「こういう時は普通こうするよね。」みたいな、村の掟的な空気(こちらを二つ目とします)を読むのは苦手です。でも、二つ目の空気を読めないために一つ目の空気が悪化するのは感じるので、自分にはよくわからない(経験から推察したとしても、納得いかない場合も多々ある)二つ目の空気を無理矢理よんで何とかやってみる、ので、とても疲れるし、うんざりした気分になります。二つ目の空気をよむことを強いてこない集団だと比較的過ごしやすいのですが、、。
菅谷はさて置き(失礼ですみません、、)缶詰が気になります。空気缶?
あ!
空気感??
空気は吸うだけで許してほしい(T-T)
横から失礼します!
>「空気」2種類あるように思います。
首がもげそうなくらい頷いてしまいました…
『「こういう時は普通こうするよね。」みたいな、村の掟的な空気』が読めない私は、どの集団に行ってもうまくいきません(T_T)
こんにちは。
P先生!最後の流れ、完璧です😆💫
ちなみにうちの年長息子も、私の怒りの空気に敏感だし、泣き真似にも敏感です。
>ヘタなのに空気を読もうと頑張って、ぐったり疲れてかんしゃくを起こす。
ほんと、その通りです!
ウチの息子は昔から育てにくいと
思っていたけれど、
本に書いてあるようなタイプと違い
友達も多く、こだわりもなくて、
10歳で過剰適応になるまで自閉症だと
気づきませんでした…
そうなって初めて、もしや私も自閉症だった
のでは?と、気にしぃだった人生を思い出して
納得しました。
この特性がもっと広まってほしいです。
空気、本人も必死で読んでるんだけど読み間違えることが多い気がします(^_^;)
結果、先生のように対応を間違える、っていう(笑)。
相手の気持ちをが考えて、みたいな言葉かけをすると『自分のことじゃないんだからわかんねーよ!』とたいていキレられるのですが、人の気持ちがわかりにくいから読み間違えるんですかねー。
いつもわかりやすい記事をありがとうございます
うちの子も空気読みすぎて疲れてしまうASDタイプです
練習していれば、いつか楽に(みんなみたいに)空気読んで人付き合いができるようになると頑張ってしまう
疲れやすいのだから、休憩はしっかり取るように言うのですが、頭の中はぐるぐるしてるようです
親としては心配なところです
ASDは空気を読めないとよくありますが、『多くの人が』とか前置き入れてほしいですよね。
先生はどうしてこんなにわかるのかといつも思いますが先生もそうなのですね。
たくさん発達障害の本を読んで勉強したけれど、空気が読めないとは書いてあってもこんなこと書いてる本なんてなかったです。
先生の患者さんは本当に幸せだと思います。
こうしてブログを読むだけで、わかってくれている人が存在してこうしてわかりやすい文章にして発信してくれる…と嬉しくて感動します。
空気を読むASDとHSCの違いって前にも記事にしてくださっていましたが難しいですね・・・。
我が家の子はASDなのか、HSCなのか。
敏感過ぎるし空気も察知するし共感力が高すぎるけれど。。
上の子は空気を読まないASDでしたが年齢と共に空気の存在に気づいてからはほんのり察知するように(が、基本気にしない)。
空気は読めないが空気にはなれるぞと名言(迷言)を残しています(笑)
ウチの不登校中の息子(ダウン症+ASD)は、めっちゃ空気を読むし、人にも興味があります。
空気読まないこともあるけど、めっちゃ読むこともあるって感じ。
一定数そういうタイプがいるのは納得です。
HSCなのか、ダウン症もあるからなのか…とも考えていましたが。
家でも、学校でも、一生懸命空気を読んで過剰適応。疲れはてて不登校。一つの原因のようにも感じてます。
菅谷・・気になります( *´艸`)ww