Categories: 不登校

就活より自己理解 〜不登校の既往があると就職できない?〜

不登校によるデメリット。

僕は「機会」の損失だと思っている。

 

代わりに得るものもあって。

それは「時間」。

不登校で失うのは〇〇のみ 子供が不登校になると「すべて終わった」みたいな感覚になる方は多いと思う。 親御さんも、不登校児自身も。 ...

 

 

子どもは成長する。

成長に欠かせないのが、「経験」だ。

 

様々な経験を通して、人は社会性を身に着ける。

ヒトは群れで生きる生き物だからね。

人を知り、自分を知り、社会のルールを知り、お尻。

もろもろの常識を身につけ、人は大人になっていく。

(お尻スルー⁉︎)

 

 

この「経験」を積むのに、現状コスパ最強の機関。

そう、学校です。

 

安価で、近場で、誰でも行けて。

勉強およびコミュニケーションの機会が、嫌でも与えられる。

ここに行けない不登校は、つまり「機会」を失っているわけだ。

 

逆に言うと、僕的には不登校のデメリットはそれだけだと思っていて。

その分得た「時間」で、別の場所で経験を積めば、それで良い。

不登校は、経験まで失ったわけじゃない。

不登校になった時点で人生詰むなんてことは、ありえない。

 

不登校は就活に不利?

相談を受けた。

 

不登校だと、その後の就職に不利じゃないですか。

経歴に穴が空きます。

将来のために、なんとしてでも学校に行かせたいのです。

 

ふむふむ。

確かに、不登校の過去がある子を積極的に採用する会社は多くないだろう。

最終学歴が

不登校で中退

高卒(および大卒)

の二人がいた場合、採用される可能性が高いのは後者だ。

 

じゃあ、なんとしてでも不登校は阻止すべきじゃね?

将来の選択肢の幅を狭めない方がいい?

 

 

さて。

みなさん、どう思われるでしょうか。

 

僕は思ったね。

 

うぉい!

 

と。

 

ちょ、待てよ、と。

僕の中の、内なるキムタクが。(内なるキムタク?)

 

優先順位、どうなっとんねん。

それより先に考えることがあるやろがい!

と。

 

説明する。

 

学校 ≒ 普通

不登校なんだよね?

その子は不登校、もしくは不登校なりかけなんよね?

 

じゃあさー。

普通のやり方では合わない子なんよ。

 

親としては(本人もか)、最初は受け入れがたいかもしれない。

その気持ちはよく分かる。

 

でも、事実そうなのだ。

「普通にふわっと」できない人だ。

目を背けたいけど、普通であって欲しいけど、普通でありたかったけど、現実そうだ。

 

「合わない人」なの。

学校が合わないってことは、いわゆる『普通』が合わない可能性が非常に高い。

※いじめや学級崩壊、環境があまりに悪いなど、学校側が「普通」じゃないケースもある。でも、多くはない。

 

 

学校って、平均的な人向けの機関だ。

そう設計されている。

 

定型発達で、IQも普通くらい、得意不得意のデコボコが小さく、感覚や思考も多数派に属す。

こんな人が一番合うだろう。

 

できるだけ多くの人に合うようにしている。

そういうふうに授業は行われるし、日常的な指導やイベントも、大多数の子の許容範囲内でおさまるよう運営される。

 

いわゆる『普通』ね。

個人的には、普通って一体全体なんやねんと思ってるけど。

ここでは、多くの人が感覚的に納得できる、いわゆる『普通』と認識してほしい。

 

学校って、『普通』なんだよ。

多くの人に合うように作られている。

義務教育、公教育は特に。

これが前提。

 

不登校ってことは

でさ。

不登校の子って、ここに馴染めなかったわけ。

『普通』が合わなかった。

※当たり前だけど、これは悪いことじゃないです。

 

じゃさ。

 

そもそも『普通』に就職するの危険じゃね?

 

と、僕は思うわけです。

 

 

普通に就活して普通の企業に就職、一般的な業務内容で普通に働く。

日本社会では一般的なコースだ。

 

でもさー。

不登校経験者は、このコースが合わない可能性が結構高い

 

もちろん、絶対ではない。

成長に伴い、『普通』に適応する可能性は十分にある。

でも、成長してもやっぱり「合わない」可能性だって十分に高い。

 

この子に対し、『普通』の就職を前提に話を進めるの、危険じゃないですか?

 

 

なぜ、学校が合わなかったのか。

この子はどんな特性を持ち、どう考え、どう行動するか。

何が得意で、何が苦手か。

この辺りを見る、つまり『玉』を観察するのが先じゃね?

 

この子は不登校になった。

つまり、ふわっと流されていくタイプではない。

 

これを無視して、一般的な枠内に押し込めること。

そのように圧をかけること。

 

めっちゃ危険!

はちゃめちゃに危険!!!

 

と、僕は思う。

 

 

不登校って、もちろんデメリットも多い。

大変だし、不安だし、風当たり強いし、お金も時間も労力もかかる。

 

でも、メリットも大きいように思う。

 

子どものうちに、爆発してくれた。

非常にわかりやすく、Noを示してくれた。

ふわっと流されることができないこの子の特性に気づき、向き合う機会を得た。

これって、ものすごいメリットだと思う。

 

ここをすっ飛ばして就活とか、何言ってるの?

と思う。

圧倒的にこっちが先だ。

 

 

そもそも僕は小児科医なので、基本的に小中学生が対象。

義務教育は、不登校でも卒業できるしー。

履歴書にも響かないしー。

就活でのデメリットは特にないと思うんだけどぉー。

 

むしろ、小中学生のうちに特性と向き合えば、高校は通信制などその子に合った場所を選択できる。

無理に全日制普通科に入れて不登校で中退するより、通信制高校をマイペースで卒業した方が、経歴的にはずっとすっきりするだろう。

※補足。もちろん普通科中退が悪いことではないです。でも、通信制や定時制の選択肢もあるよってこと。盲目的に普通科にこだわるのってむしろデメリットの方が大きくない? という提案です。

 

子どものうちに爆発してくれて、むしろよかった。

親や先生が手助けできる年齢でよかった。

大人になって詰むより、ずっとフォローしやすいと思う。

 

ムリな普通就職の先に

僕、この仕事を始めて、結構聞くんだ。

 

発達障害の人が職場にいて、マジ迷惑。

仕事できないし、言うと反抗するし。

ホントいい加減にしてほしい。

 

これ、実際に日本各地で起きている現象だと思う。

ケアされなかった発達障害の人が普通に就職し、うまく適応できない。

周囲はマジで大変。

 

加えて、本人も全然ハッピーじゃない。

本人も「なんかうまくいかない」というのは分かるから、意固地になったり、変にこだわったり、やる気をなくしたり、自分を責めたり。

周囲は余計に困る。

 

発達障害に限らず、ちょっと変わった『玉』を持っている人、知的なハンデがある人、ふわっと流されることができない人は、こうなりがち。

 

僕、これが一番不幸だと思う。

誰も幸せにならない。

 

 

『普通』にできない人が、『普通』にやろうとする。

結果、こうなる。

めちゃめちゃ不幸。

 

持論なんだけど、社会人って、

できるって言ったのにできないのが、一番迷惑。

特性のある人が大人になって圧倒的に一番困ることぶひーーーーー! 最近ですね、個人的にめっちゃ腹立つ出来事があって。 もうね。 もうね。 コレが一番困る...

 

まさに、ココに突っ込むと思うんだよねー。

 

できないのに、デコボコがあるのに、自覚なく「できます!」と引き受ける。

案の定、できない。

みんな不幸だ。

 

就活って、企業の欲しい人材を選ぶ場だからさー。

不登校の既往があると採用しない企業なら、入職しないのがお互いのため。

企業は「ふわっと流される人」「普通にできる人」を求めているわけで。

ニーズと合致しない。

不採用上等! 入職前にわかってよかったね! である。

 

じゃあ、得意を買ってくれる企業に入るか、いっそのこと起業しちゃうか。

働き方を選ぶ方がよい。

 

 

不登校の既往があるなら、精度高く自分を知る必要がある。

「コレはできて、コレはできません」とはっきり明示すべき。

 

道は「普通の企業に普通に就職」の一択じゃない。

こっちの作戦を練る方がずっと有用で、建設的。

無理に履歴書をきれいにしたところで、根本的な解決にはならない。

※現実問題、いわゆる「普通の就職」が最も間口が広く収入も安定しやすいのは承知。でも、特性次第ではうまくいかない人もいるんじゃないかという提案です。現実的にそんなわけにいかない!という反論はご遠慮ください。意味がないので。

 

まとめ

不登校になったなら、第一優先はその子の『玉』の観察だ。

とりあえず「普通」を取り繕おうとしても、多分イバラの道。

 

この子は、学校の何が合わなかったのか。

なにがイヤで、どうなればできるのか。

どんな活動が得意で、どれが苦手なのか。

 

そもそも、人類全員が「ふわっと」「普通に」「平均的に」できる必要などないわけで。

幸か不幸か、尖った個性であり、変わった『玉』だ。

あなたは、その子は、そうだった。

 

どう戦うか、戦略的に行きたい。

そのためにはまず本質を知ることだろう。

自分を知り、社会を知り、お尻。

 

せっかく不登校になったのだから。

pediatrician-p

View Comments

  • お尻(*´▽`*)
    P先生のネタはジワジワくる…(内なるキムタク?)もじわる(*´Д`*)

    「普通」以外の選択肢が昔よりは増えたり選びやすい世の中になってて良かったなぁと思います。
    選択肢が多いのはえぇこっちゃ(っ´ω`c)

  • お忙しい中、いつもありがとうございます。
    来年成人の息子。五月雨のち、完全不登校、入学、休学、復学、休学…。家を快適にを目指して、雑談し、一緒にご飯を食べたり、外食したり。昼夜逆転、夜中の盗み食い、明け方の風呂にも何一つ文句言わず…。4年目です。毎日ゲームして、食べて、寝て、時々友達と遊びに出掛けます。1ミリの変化もない。この子は、社会復帰する8割の「普通」の不登校ではなく、できない2割の方なんでしょうか…玉の見方がわかりません…

  • 久しぶりにコメントさせていただきます。
    不登校歴2年余り、先月6月から毎日15分〜2時間登校できるようになった、中3男子です。

    そして、この2年、
    毎回、先生のメッセージに
    笑い、泣き、励まされてきた母親です。

    頷きながら、今回のメッセージも読ませて頂きました。

    息子とは、一緒に泣き、笑い、(好きなこと、嫌いなことから、生きること、死ぬこと、将来のことなど、、、)本当に様々なことを話してきました。普通の思春期を送っていたらこんなに話すことはなかったと思います。

    その大切な時間を持てたことで、
    息子の『学校に合わない』という特別な特性に気づけたし、『人生、なんとかなる』という気持ちにもたどり着くことができました。

    幸い、市内に毎日通学できる通信制の高校を、早い時期に見つけることが出来、受験に向けて、納得して前に進んでいます。

    息子の不登校は、辛いです、辛かった、、それはそれは、そうなった家族しか分からない何とも言えない苦難があります。

    でも、振り返ってみれば、不登校は、(起立性調整障害→今は、回復)私の固まった考え方をぶち壊してくれた、家族がひとつになれた、かわいい愛犬が家に来た、なにより息子が前より「生きやすく」なった、必ずしも『マイナス』だけじゃない、と気づきました。

    先生。
    毎回、言葉を丁寧に選び、ユーモアを交えてメッセージを送り続けてくださり、ありがとうございます。

    多くの親子が、先生の言葉に救われています。
    ありがとうございます!!

  • 不登校歴半年の中学生の息子がいます。
    毎日悩まない日はありません。。

    子供のうちに爆発してくれて良かった
    の言葉に、涙が出ました。
    私の考え方を変えないとなと思います。

  • いつも楽しみに読ませて頂いています。
    「普通にふわっとできない人」ってフレーズ、まさにその通り!と感じます。
    息子は小さい時から、「ほら、みんなしてるよ。一緒にしようよ。」が全く通じない子でした。
    本当に中学生になってすぐに不登校になりましたが、今で良かったなとしみじみ思いますし、息子も小学校のうちはめっちゃ頑張ってたんだろうなと思います。

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