Categories: 親子関係

早けりゃいいってもんじゃない

先日、都立小児総合医療センターから、早すぎるトイレトレーニングに警鐘が鳴らされた。

 

トイレトレーニングを1歳半から2歳頃を開始目安とするものもありますが、2歳までは力んで排尿しており、成人の排尿の仕方と大きく異なります。

排尿は本来力を抜いてするものです

排尿の強制はその後の排尿機能異常の原因になりえますので2歳半以降に焦らずに行うことをお勧めします。

#泌尿器科

 

これ、僕も感じていて。

排尿の方法についてじゃなくて(それは初耳。へー。)、もっと遅くていいんじゃないかってことね。

 

早くオムツが外れた子でも、たまに失敗があったりして、結局完全にパンツになるのはみんな4歳前後じゃないかと。

トイレトレーニングを早く始めても遅く始めても、結局同じくらいなんじゃ、と。

 

来年入園なのに、まだオムツが外れません。

 

↑この相談はよく受ける。

でも、来年入園ってことは、今は2歳児クラスの年齢だよね。

まだいいんじゃね? と。

 

早生まれの子なんか特に、「入園までにおにいさん(おねえさん)パンツ」は厳しいんじゃないかと思っていた。

園の方針もあるだろうけどさー。

 

そして、早くできたらその後も安泰! ってわけじゃないと思うし。

 

乳児健診にて

乳児健診をしていると、発達段階のハードルをいつクリアするか、気にする親御さんは多いと感じる。

いつ歩いたとか、まだ歯が生えないとかね。

 

でもさー。

結局みんな歩くし、歯も生えるんだよ。

 

ある一定のラインを越えて遅いと(1歳半までに歩かない、1歳までに歯が生えないなど)と、医療のチェックが入るけど。

10ヶ月で歩く子と、1歳4ヶ月で歩く子に、正直差など感じない。

正常範囲のバラツキだ。

 

10ヶ月で歩く子に、

「早いですねー、運動神経バツグンですねー」

なーんて言うこともあるけど。

ただのリップサービスで、独歩が早い子がその後の運動発達も良いというエビデンスはない。

※いくつかの論文だと、歩行獲得年齢とその後の運動能力には相関がないらしいです。発語の時期とその後の言語能力も同じ。

早くできりゃいいってもんじゃないと思うんだよね。

 

 

他にも、4歳くらいで「ひらがなが書けません!」とかね。

小学校で習うんだから、まだよくね? と。

 

できる子もいるかもだけどできない子もいるし、早く獲得した子がその後も頭脳明晰! 成績優秀! ってわけじゃない。

むしろ、ひらがなについては独学で変な癖をつける方がその後困ると聞いたことあるし。

 

発達、心の分野

でね。

発達外来を受診する子って、やっぱ「できない」ことがあるんだよね。

 

  • 先生の話が聞けない
  • 人との距離感がとれない
  • 切り替えできない
  • 計画性がない

とかですね。

 

 

僕、いつも思うんだけどさ。

 

「今できてる子が素晴らしく理解力がよく、将来的にも安泰」とは、マジで限らない

ですよ。

逆に、できる子ってなんでできるの?子どもは勉強がキライだ。 自発的になんてまずしないのが普通。 片付けもキライだ。 散らかすのは得意だけど。 ...

 

本質的なことは分からずとも、性格的にふわっと従う子がいる。

ふわっとできちゃう子ね。

 

この子たちは、小児期は指示が出されるからよい。

でも大人になって、自発的に動く必要が出てきたら困るかもしれないよ?

 

逆に、子どもの頃は全くできなかった子が、自己理解を経て、自分で気を付けるようになるかも。

ADHDの子が、経験を通じて遅刻や忘れ物に自発的に注意するようになれば、かなり安泰だ。

 

そう、この「自発的に」がキーとなる。

実際に今動くかより、どこまで理解しているかの方が大事。

 

  1. 理解し、
  2. モチベーションを持って、
  3. 自発的に動く

のがゴールだ。

 

その視点で見ると、早くできるようになった人がみんなゴールに到達しているかというと、全然そうとは限らない。

「早くできる」より、「状況が変わっても確実にできる」方が大事なように思うんだよねー。

 

そのためには、しっかり理解し、しっかりモチベーションを持つ必要がある。

↑ココ!

ココ見て! って思う。

 

ゴールを見据えて 〜二次障害を起こさない〜

「今」じゃなくていい。

できない理由があるなら、焦らなくてよい。

 

必要性を理解してないとかさ。

本人的に困り感がないとか。

わかっちゃいるけど衝動性からゲームを優先してしまう、とか。

 

困らないのに動ける子の方が、特殊かもしれない。

逆に、それだけゲームに熱中できるのは、強みかもよ?

 

その子をよく観察して、ゴールを見据え、長い目でみてほしい。

 

 

なぜこんなことを言うかというと。

早くできる方が、そりゃいいじゃん?

他の子にできることは、この子にもやらせたいじゃん?

 

二次障害が怖い

のです。

 

 

できないのはいいんだよ。

オムツにうんちをするのは、別にいい。

そのうち、周囲の目を気にしたらやめるから。

小学校では、オムツの子はほぼいなくなる。

※まだオムツの子もいます。全然悪いことじゃない。今は、割合的にかなり少なくなるって話。つまり、大部分の子が小学校までにオムツが取れるって話です。

 

でも、「トイレが怖い」という思いは消えない。

失敗して恥ずかしかった気持ちも残る。

親に叱られまくったトイレトレーニングの思い出も、もしかしたら残るかもしれない。

 

 

発達特性として、できないことがある。

できないことを、無理にやらされる。

  • 空気が読めないのに、読めと言われる。
  • 衝動性が強いのに、プランニングしろと責め立てられる。

→自尊心を傷つけ、親子関係も損ねる。

 

↑コッチ!

コッチの方が、何倍も、何十倍も、何百倍も大事だと思うんだよねー。

 

 

診療していて、特性って「なんとかなる」ことが多い。

工夫、注意、合理的配慮なんかで「なんとかなる」。※もちろん、それでも困るけど。困るけど、なんとかなる。

 

でも、二次障害は。

親子関係が悪かったり、自信をなくしたり、大人に不信感を持っちゃったりしていると。

コッチの方が、ずっとずっと困るのだ。

 

 

早くできた人はすばらしい。

それは否定しない。

 

でも、できなかった人。

現在進行形でできない人。

 

早いことが偉いわけじゃねーです。

 

大器晩成という言葉もある。

表面上の行動だけじゃなく、どこまで理解し、どこまで自発的に動いているのかを見てほしい。

pediatrician-p

View Comments

  • その子のタイミングが待つ。焦ってしまうけれど、先生のブログを読むたび思い出して行こうと思います。

    私のことですが、先日はじめて二重跳びができるようになりました。子どもの頃は出来なかったのに!なんかサラッとできちゃった!次は鉄棒の逆上がりを頑張ろうと思います(笑)
    母の立場だけど、おもしろがって生きてる姿を見せたいな。

  • 通勤電車でうるうるしながら読ませていただきました。

    中学入学早々、完全不登校となり後半は色々自ら動き出しましたが中学2年で学校に行けないと現在、受け止め中です。

    不登校になったきっかけは当時、小児科の先生も原因わからずで
    入院までした摂食障害でした。
    小学校の6年間、友達、サッカー大好き、勉強はそこそこで一見、問題のない子でした。
    でも親としてひっかかる点が幾つかありました。
    忘れ物、時間割苦手、作文書けない、
    合唱コンクールとか大嫌い等々、、、
    まぁ、いつかは克服していけるだろうと親がサポートしながらでした。
    今思うと頑張って頑張った6年間だったのかなーと。
    今、家でゆっくり過ごしてる玉を観察中です。
    この1年でガリガリだった身体もムチムチになり朝から『腹減ったー』と言われると嬉しくなります。

    息子に合った居場所が見つかると嬉しいです。
    P先生、いつもありがとうございます。

  • すみません。途中で送信してしまいました!
    つづきです…

    息子は絶賛不登校中です。
    誤送信してしまい、ゆっくりまとめようと思っていたのに焦って頭が真っ白になってしまいました。

    私の息子の場合は、幼稚園から始まっているので特殊な例かもしれません。
    いじめとかではなく、本当にその環境で過ごすことに苦痛を感じるタイプなんだと思います。
    通っていた幼稚園というより、社会のシステムが辛いんだと思います。
    学校は合わない子にとって辛い環境です。
    やりたくないことを無理やり頑張らないといけない詰め合わせのような…
    エネルギーがいくらあっても足りないようです。
    自分のやりたいと思うことは少しのエネルギーで出来ますが、やりたくないことにはその何倍ものエネルギーが必要です。
    そりゃ誰でも嫌になりますよ。仕事と一緒です。

    だから、私はまず自分が楽しんで生きることにしました。
    夫とも沢山話し合いました。自分達がまず楽しむ生き方にシフトすると!。
    子供が未来に希望を持てるようになるためには、一番近くにいる自分がそういう生き方をしていないと想像出来ないと思ったからです。

    未来なんて誰にもわかりません。
    周りは勝手に色々言ってきますが、ほっときましょう。
    その人の考える未来を言っているだけであって、そうなるかなんて誰にもわからないのです。
    自分の人生を振り返っても、こんな人生を歩むなんて想像していませんでした。
    みなさまもそうではないでしょうか。
    でも、人生を深く考えるきっかけをくれた息子には本当に感謝しています。
    やっとこれからは自分の人生を生きるスタートが切れそうです。

    昔と違って今は、会社に勤めなくても働くことができます。
    個人事業主はとても簡単になれます。在宅で出来る仕事も沢山あります。
    子供達に沢山選択肢があることを教えて、未来に希望を持ってほしいです。

    P先生のブログに出会えて本当に救われました。
    今まで書籍やネットで沢山情報を漁りましたが、やっと腑に落ちるブログにたどり着きました。
    ありがとうございます。
    そして、絶賛不登校中の子育てをされている親御さま、いつも本当にお疲れさまです。

  • P先生こんにちは。そして、みなさまお疲れさまです。

    いや~、この時期は落ち着きませんねぇ…
    変化に弱いHSPです。そして息子も娘もHSCです。
    小学3年生の息子は幼稚園から登園拒否で、小学校は入学式のみ出席しふ

  • こんにちは。いつも拝読させていただいております。
    初めてコメントいたします。
    小4から不登校、通信制高校2年目の息子がおります。
    おとなしく賢く、優しい子です。

    親子関係はよく、「いつかできるようになるよ」でここまできましたが、対人不安やいやなことの回避が強く、スクーリングやレポートを嫌がるので高校卒業が精一杯、働くことや進学など無理そうです。

    それでも少しずつは良くなってきていると思うのですが、高校の先生からは「周りや妹が進学したり社会に出た時に引け目を感じで、荒れたりひきこもりになりますよ。今から嫌なことも少しずつしないと」と言われ、もっともだと思います。

    好きなことをしていれば元気で家事もよくしてくれますが、嫌なことを考えただけでも寝込み、死にたくなると言います。

    今のところ本人も家族も困っていませんが、「ひきこもりになる」と言われると心配です。
    高校卒業のためではなく、できないことをできるようになるために、毎日学校の課題を15分ずつするように言いましたが、
    課題をするとスクーリングのことを考えて嫌な気持ちになるから嫌だと言います。

    高校の先生からは障害があるかもしれないと言われ、
    そんなこと言われても……という感じですが、
    息子に「自分の特性がわかれば生きづらさの原因や対応がわかるかもしれないから検査を受けてみる?」と聞いたところ
    「そこまでじゃない」と乗り気ではありません。

    趣味のゲームやアニメ、楽器や作曲などには取り組んでいますが、プロになれるほどの腕では当然ありません。

    小中不登校でも大学生になれると思っていましたが、今のままでは入試合格はできても通えません。

    できないことを無理やりさせることはできないし、傷つけたり親子関係を損なうよりは楽しく生き生き暮らす中でゆっくり成長してほしいと思ってきましたが、
    20代半ば以降になって苦しむのは本人で親の責任、というような話を高校の先生からされ、行き詰まりを感じています。

    反発されても辛抱強く話すか、
    自分が心配だからレポートをしてほしいと言うか
    (そう言えばやりますが、別にレポート提出や高校卒業が目標ではありません)

    まさか「このままでは引きこもり」とも言えないし、
    高校の先生の話も理解していて
    「先生はそう考えてるんだね」と言っていました。

    上に多浪中の兄もおり、一生懸命育てた子どもがみんな無職かと思うと、こちらが病みそうです。

    P先生のご意見アドバイス伺えると嬉しいです。

  • 高校生の不登校の息子がいます。行けないのに行けという、やれないのにやれと言う以前の私です。だけど、P先生のおっしゃるように二次障害で困りました。親子の信頼関係がありませんでした。困ったことで、沢山悩み考えて、自由(自ずから理由を持って動く)な子育てに行き着きました。その子の成長に合わせた子育てができるよう待てる親になりたいです。

  • 100回くらい頷きながら、そして、
    ホッとしながら読みました。

    我が子達も成長がバラバラスピードでした。

    特に発達が「遅い」と言われると、
    ペリーにガンガン不安を煽られて、
    親は容赦なく追いつめられてしまいます。

    すぎてみれば全く許容範囲でした。

    長い目で、
    末っ子の成長も、
    信じて楽しく見守って行こうと思います。

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