Categories: 発達障害

失敗してもいいから、嘘はつかないでほしい

小学生の子。

 

友達に物を盗られたって言ったんです。

でも実際は、この子が友達の物を盗ったようです。

嘘ついてました!

 

百歩譲って、失敗はいい。

やらかすのもわかる。

トラブルもしょうがない。

 

でも、嘘だけはつかないでほしい!

 

浅はかな嘘

小学生は、よく嘘をつく。

それも、すぐバレる、浅はかな嘘を。

 

宿題やったって言ったのに、やってない。

塾をサボったのに、行ったって。

持たせたお金でゲームをしたのに、本を買ったと。

 

そして、「じゃあその本はどこ?」と聞くと、

 

男の子
今はサトシに貸してる。

 

本当?

確認すると案の定、サトシはそんな本知らないと。

ピカチュウと冒険に出てるって。

 

 

つまり、

  1. ゲームでの散財を隠すために、本を買ったとウソをつき、
  2. バレそうになったら、人に貸したとさらにウソの上塗りをした。

わけだ。

 

嘘に嘘を重ねたわけ。

そりゃお母さん、激おこだわ。

キミが悪いわ。

キミに決めた。

 

 

嘘はつかないで!

嘘が一番イヤって、何度も言ってるでしょっ!

 

 

このように、小学生はよく嘘をつく。

しかも、すぐバレる嘘。

 

バレたらさらに怒られるって分かってるんだからさー。

しょーもない嘘はやめるか、つくならもっとマシな嘘をつきなさいよ。

もうっ。

 

先読みできない

これねー。

小学生の嘘は、基本浅いです。

 

とりあえず、今! 目の前の! ピンチを逃れるため、とっさについたウソだ。

正直に言うか、ウソをつくか、どこまで手の込んだウソをつくか……なんて、考えていない。

 

とりあえず言った。

今! この瞬間! 叱られるのを回避する。

ソレダケ。

 

よく言えば純粋、悪く言えば幼いのです。

人を騙そうとか困らせてやろうなんて計画性は皆無です。

※上記ADHDタイプの典型的なウソです。ASDタイプはちょっと違って、認識が歪んだウソ。自分の中で物語を作り上げ、信じ込んでいたりする。だから、嘘であって嘘でなかったり。

 

 

でも、親御さんは敏感に反応する。

 

嘘をつくのは人としてダメ!

 

やらかした悪さ(忘れ物とかケンカとか)より、嘘の方がずっとずっと悪い。

このまま嘘をつき続け、嘘つきの大人になったらいけない。

嘘は絶対にダメだ。

 

子どもなので、トラブルの回避が難しいのはわかる。

でも、嘘をつかず真実を言うことはできるでしょーがっ!!!

 

わかりみ。

わかりみが深い。

 

 

でも、これは杞憂だ。

だってその子、浅はかなんだもの。

 

ここまで考えていない。

目の前の叱責を回避するため、とっさに嘘をついた。

それだけなのだ。

 

ここに、

  • 人を貶めようとか、
  • 自分の利益のためには他人を騙してよいとか、
  • 誰かの足をひっぱろうだとか、

そのような打算は一切働いていない。

 

その証拠に、悪意を持って物事を考えられる子は、もう少しマシな嘘をつく。

こんなすぐバレる、あまりに表面的なしょーもないウソ、つかない。

つくメリットがない。

 

 

悪い気持ちは一切ない。

ザ・純粋無垢。

 

叱られないように自分の身を守った。

それだけ。

 

だけど、そのウソのため、結果的に余計に叱られているわけだ。

見事に作戦失敗だ。(笑)

 

10歳の壁

子どもなんです。

「これを言ったらどうなるか」が、考えられない。

 

ある年齢までの嘘は基本罪がないと、僕は考えている。

単なる『保身』。失敗してるけど(笑)

それ以上でも以下でもない。

 

でも、ウソはダメです。

 

それはそうです。

だけどこれが通じるようになるには、年齢の壁があると僕は思っていて。

 

それは、

 

10歳

 

です。

 

  • 嘘をつくと、整合性を持たせるためにさらにウソを重ねる必要が出てくる。
  • 嘘によって傷つく人がいる。
  • あとでバレたら事態が悪化する。

→だから、下手なことは言わないでおこう。

 

これができるのが、10歳以降。※個人差あります。もちろん。

 

10歳って、キーとなる年齢だ。

(多少)後先考えて行動できるようになる。

多動・衝動性が(多少)鳴りを潜める。

特にADHDタイプで、トラブルや困りごとがグッと減る年齢。

 

きっと、前頭葉が発達するのだ。

物事を理性的に考えたり、感情や行動にブレーキをかける機能が、前頭葉にある。

人間らしさというか。

前頭葉が発達すると、一段深い思考ができるようになるんね。

 

逆に言うと、10歳以下の子は前頭葉が未熟だ。

だから本能的に『保身』する。

刹那的、反射的に。

そう、そのしょーもないウソをつくわけです。

しょーがない。

 

 

10歳以下の子は、嘘の制御ができない。

何度言い聞かせても、やっぱりウソをつく。

大人をおちょくっているかのような、すぐバレる、しょーもないウソをつき続ける。

 

でも、悪気はないんです。

気持ちはわかりますが、まぁまぁ。

そのうち自然に治りますから。

ね?

 

10歳以降の嘘

 

でもうちの子、10歳をとっくに越えて、ウソをつき続けます。

しかも巧妙に計算された嘘。

親に嫌悪感を与えるような、イヤな嘘をつくんです。

 

これは多分、わざとです。

 

10歳を越え、ある程度前頭葉が成熟した子のつく嘘。

後先考える能力があるので、巧妙化してくる。

 

上手にバレないようについたり。

絶妙に説得力のある話をしたりする。

それだけ、嘘をついてまで優先したい何かがあるのだろう。

 

もしくは、悪意のある嘘だ。

親の地雷を敢えて踏んで、反応を見ていたり。

大人に反感を持っている子だと、嫌がらせ目的でいやらしい嘘をついたりする。

 

このあたり、わざとだ。

明確な目的意識を持って嘘をついている。

低年齢の嘘とは性質が異なる。

 

 

この場合、その嘘をついた心理をよく見てあげてほしい。

必要があるから嘘をついたのだ。

なぜ、どんな必要があったのだろう?

 

  • どうしても守りたいものがあったのかもしれない。
  • むしゃくしゃして、誰かを貶めたかったのか。
  • 「大人はどーせ聞いてくれない」と自暴自棄になったのかもしれない。
  • 今までの不平不満から、次はお前(親)が苦しめ! って意味かも。
  • 精神的に消耗して、思考能力が低下してるのかも。

 

わからないけど、それ相応の理由があるはずだ。

そうじゃなきゃ、嘘なんてつかない。

メリットや理由があるから嘘をついたはず。

先々を考え、リスクと天秤にかけた結果の嘘の可能性が高い。

 

 

なので、ただただ嘘はダメ!と正論を唱えても、きっと響かない。

そんなこと、本人もよく分かっている。

嘘をつくに至った心の動きを聞いてやってほしいなーと思う。

 

あ、この年齢になると、親には何も言わないか。

今までの生育歴や性格を考慮したり、細々した発言をパズルのように組み合わせたり、機嫌の良いときにポロッとこぼすのを待ったり。

よく観察してほしい。

pediatrician-p

View Comments

  • 最近こちらの記事を読みました。
    ASDタイプの嘘(おそらく本人にとっては嘘ではない)の対応をどうしたらよいのか、、上のmama様同様、知りたいところです。
    機会があればそこをいつかとりあげてほしいですm(_ _)m

  • P先生いつも楽しく為になるお話をありがとうございます。
    我が子は「ADHD+ASD疑い」という診断を受けています。

    P先生がおっしゃる、
    「ASDタイプはちょっと違って、認識が歪んだウソ。自分の中で物語を作り上げ、信じ込んでいたりする。だから、嘘であって嘘でなかったり。」


    我が子も最近このようなウソをつくことがあり、対応に困っていて…
    第三者が見ると明らかにウソと分かるんですが、本人はそう信じ込んでいて、嘘をついている様子ではなく…
    正しい事実を教えようとしても、必死に違う!と訴えるので否定しすぎると可哀想な気もして…

    こちらのウソについての良い対応はありますか?もし良ろしければP先生のお考えを教えていただきたいです。
    よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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