発達障害。
の、グレーゾーン。
診断未満のグレーゾーンの人がいることは、広く認知されている様子。
親御さんからこの言葉が出ることも多い。
実際、グレーゾーンに分類される人は多い。
特性の強さって正規分布するから(多分)、「すごくある人」より「ちょっとある人」の方がずっと多かったりする。
IQなんかもそうで、「知的障害」よりも「境界知能」の方が圧倒的に多いのだ。(画像お借りしました)
だから、「障害」の人より「グレー」の人の方が、一般的に多い。
僕は外来で、日々「グレーゾーンの人」と接していると言っても過言ではない。
「はっきり診断できる人」より、「診断はつかないけど困っている人」の方が多い実感がある。
余談だけど、これだけグレーゾーンの人と接していると、「むしろ定型発達ってナニ?」ってなる。
『普通』がゲシュタルト崩壊して、人類全員グレーなんじゃないかとすら思えてくる。
閑話休題。
グレーゾーンって言われると、じゃあ障害じゃないんだと安堵する気持ちが湧いてくるような気がしないでもないと言えなくもない。
グレーゾーンか。
じゃあ訓練次第で『普通』になるってことだな。
グレーゾーンか。
じゃあ発達障害じゃないわけだし、できないのはナマケだ。
その気持ちはわかる。
でも、実際そうじゃない。
グレーは白じゃなくて薄い黒
と、誰かが言っていた。
うまい言い方だと思う。
そしてこれが真理だろう。
グレーはグレーで、白じゃない。
薄めたら白になるような気がしちゃうけど、ならない。
グレーはグレー。
特性は、「ある」のだ。
余談だが、ロックバンドのGLAYの名前の由来は、「白にも黒にも染まらない」だった気がする。
イカしTERU。
でね。
たくさんいる「グレー」だけど、この人たち、めっちゃ困ってる。
いや、困っTERU。
「障害未満」なわけだから、じゃあ「障害」の人よりは困りごとが少ない?
そう思うじゃん?
これが、あながちそうでもなくて。
しっかり診断がつく人ももちろん大変だけど、つかない人にも特有の大変さがある。
症状が典型的じゃないのだ。
はっきり診断がつく人は、もちろん大変な部分はあるけれど、別の見方をすると「発達障害の特徴」に合致してるってことだ。
理解の助けになる情報はそれなりに出回っているし、人にも比較的伝わりやすい。
支援にも乗りやすかったりする。
※一応補足。同じ発達障害と診断されてもでも、いくつかのバリエーションはあります。ADHDだと、多動・衝動優勢と、不注意優勢とか。ASDだと、単純作業が得意なタイプと苦手なタイプとか。性格や環境もあるし。だから「みんな同じ」なわけじゃないです、もちろん。
でも、「グレー」の人。
この人は、「発達障害」の枠にはハマらない。
もちろん「定型発達」にもハマらない。
非常に分かりにくい!
困りごとはある。
でも発達障害の診断基準は満たさないということだ。
特徴が、さほど強くないのかもしれないし。
特徴Aはめっちゃ強いけど、特徴BとCが全く目立たないのかもしれない。
全ての特徴がうっすらあって、時と場合によって出たり出なかったりするのかもしれない。
とにかく典型的じゃないのだ。
で、この人が日常生活で困らないかというと、めっちゃ困る。
特性は『ある』。
だから困るハズなのだ。
なのに、理解されづらいし、支援にも乗りづらい。
病気じゃないわけだから、根性論や自己責任論にもなりやすい。
結果、失敗や叱責の経験が増える。
自己肯定感が低下しやすい。
誤解を恐れず言えば、見方によっては
グレーは発達障害よりハードモードかもしれない
とすら思う。
グレーゾーンは難しい。
本人も困るし、周りも困る。
支援が非常に難しいと感じる。
結局、
診断にこだわらず、「その子」を見て!
ってことになるのだけれど。
典型的じゃないからこそ、よく観察する必要がある。
どの特性が強くて、どう困っちゃうのか。
マジで人による。
そう、マジで人によるのよ。
このブログは多くの人に共通しそうな困りごとを例に挙げているが、例が思い当たらないくらい「人による」。
このタイプはこんなふうに困るよね、だからこうするといいよ! が、出来ない。
グレーはマジ人による。
よく観察してください。
どんな特徴がある?
どんなときに困る?
じゃあ、どうすればよさそう?
グレーは難しい。
HOWEVER (しかしながら)、その
「どこにもハマらない」「黒でも白でもない」特徴は、うまく生かせばその子の強み
だ。
これもまた事実。
高い集中力を発揮する人もいる。
軽やかなフットワークを持つ人もいる。
物怖じせず自己主張できる人、繊細な感性を持つ人、好きな分野を極められる人、正確に仕事をこなす人、周囲の潤滑油となる癒し系の人。
苦手があるってことは、絶対に強みもあるのだ。
中途半端な特性をうまく把握し、この世界に新しい風を吹かせてくれることを期待している。
やわらかな風が吹く、この場所で。
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黒の息子は学校で受けられる支援が悩ましいけど、グレーな娘は処理速度凹に配慮すれば問題なくなるので学校での配慮も容易いです。
結局何色でも学校が支援しやすい内容に当てはまるか当てはまらないか。
それにつきるのかな?
先生、いつもクスッと面白くて理解しやすい文章ありがとうございます。
ASD+ADHDの男子(18歳大学生)、ADHD+LGBTqの女子(16歳高校生)を育てていますが、生活の中で困り事があれば対策について話し合い、楽しく生活できていそうならば声を掛けずに見守って敢えて失敗させたりしています(忘れ物等)。親でない大人から注意や助言をいただくのは大切なことだと思うので、自己肯定感を下げない程度につまづくのも悪くはないかな〜と感じる今日この頃です。
ブラックもグレーもホワイトも、自分の長所を活かして苦手な部分をどうにかカバーして努力して認めてもらって、元気に楽しい人生を送れたら最高ですよね。発達障害児の育児は、人として本当に勉強になることばかりです。
今日、小3ASD普通級国語の宿題(ひらがなを漢字に直しましょう)を手伝ってたら、「あにはこがたなできをきってヨットをつくることができません」って言う問題があって、思わず「ヨットをつくりました」でよくねー?そんなこと言いなさんなーって思いましたって言う単なる報告です。
小刀でヨットなんて作れなくていいよw
GLAY、ガッツリハマった世代でした。
最後のシメがキマリ過ぎてて、感動の域です。
いいこと言うなぁ、TERU…。(いや、P先生の文才がスバラシイのか?(笑))
ほんと、グレーって聞くと『黒よりはマシ』ってイメージになりがちですが、困り感は黒と変わらず表面化するかどうかの違いなら、むしろグレーのほうが大変ですよね。
なぜ最初に色で表現してしまったのか…。(“特性はグラデーション”的なところからきているんだと思いますが)
P先生、こんにちは。
いつもありがとうございます。
診断は下りるまで行かず、けど思春期少し前からあらゆる困り事を抱える息子は、まさにGLAYです。
診断下りたら下りたで悩むけど、この日常の困り感どうにかならならないものか…
成績もまさにそんな辺りで、まだ下もいるからってことで、悲しいかな、学校でも特に問題にならないのです。
家では書き取りとかできずに、イーッとなってるんですが…
でも、家を快適にをモットーに、頑張りたいと思います。
絶え間なく愛を注ぎます、息子に、笑。
P先生、こんばんは。
困っTERU。明日から使います(脳内で)。
我が家の年長男児は3歳でASD診断済みです。
診断されているという点では発達障害のグレーゾーンではないんだと思います。
春から就学相談前のあれやこれで、平均層にやや届かない境界知能だということがわかってきまして。
...というか、一番近くでよく見てきたので、発達検査の数値を見るまでもなくわかっていて。
今回の記事を読んでふと、
「知能と発達。どちらが障害の下地(ベース)になっているのか」
と疑問に思ってしまいました。
我が子の場合は発達面が気になってから割とすぐに自治体の支援に繋がり、ASDのこだわりやコミュニケーションの課題は、子に合った支援や工夫をすることで、突風(癇癪ともいう)が吹いてもすぐ復旧できる位、日々が穏やかになりました。
関わり方がわかっていることで子も周りも(母も)QOLが上がって心に余裕が出てきた結果、物事の理解面で「...おや?」と気づくことが多くなったという感じです。
もし、子の困り感の本質は診断があるASDよりも知能面がグレーなことに端を発していたら、P先生のおっしゃる「その子を見て!」は力強い言葉です。
絶え間なく注ぐ愛のナントカでいいんですよね笑
先生こんばんは!
今日の記事もとても頷けました。ウンウン。
ところで、グレーと黒の違いって何で判断するのでしょうか?例えば、ものすごい問題児は黒?でも躾のせいだとしたら?発達検査の数値の高低差?でも全然困ってなかったら?
考えれば考えるほどわからなくなる発達障害。我が息子はきっとブラックです。しかも+デビル。でもおかげさまで最近やっと私が変わることができました。。
あなたを彩る全てを抱きしめて、ゆっくりと歩き出す〜
先生、30代だけどGLAYをよくご存知なんですね。
感動です。
初老の母より
GLAY、めっちゃよく聞いた。
そしてグレーな2人を絶賛育て中。
1人はもうじき新制度により成人。1人ははじめての進路岐路。
既に新しい風を吹かせてくれてます。
放課後デイも経験させてもらったし(過去形)、不登校も経験させてもらってる(現在進行形)。
さらに新しい風が吹くのかな〜
出来れば嵐ではなく、やわらかい風を所望します