Categories: 不登校

自分に出来ないことを認める。

 

自分はこれが出来ない。

 

認めるのって、ハードル高いですよね。

苦手なこと、出来ないこと、ムリなこと。

そのまま認めるのってめっちゃハードル高い。

 

でも、できたらめっちゃかっこいい!

 

こんな子がいました。

不登校の子。

 

女の子
学校は、行こうと思えば行ける。

でも、今じゃないかな。

 

初診時からそう言っていた。

不登校初期から一貫して。

その気になれば行けるけど、今じゃない、今は行かないって決めていると。

 

そっかー。

じゃあ行くタイミングは自分で決めてね!

 

そう伝えて、1年以上の不登校。

家で快適に過ごしていた。

 

 

先日、この子が言い出した。

 

女の子
来月から行くことに決めました。

出席が足りないと進級できなくなるから。

 

曰く、それまでは出席カウントがなかったが、学校のシステムが変わり、来月以降はされるようになると。

欠席が嵩むと留年もしくは退学らしい。

登校せざるを得なくなったらしい。

 

とは言え、結構な期間不登校の子だ。

 

大丈夫?

行けそう?

 

女の子
大丈夫です、行けます

 

じゃあってんで、応援して送り出した。

 

 

で。

翌月、受診で報告を聞く。

 

女の子
何回か登校したんだけど……。

行けると思ったけど、やっぱりしんどくて……。(泣)

 

女の子
やっぱり自分にはあの学校は通えないって分かったので、転校します。

 

そっか。

ありがとう、よく言ってくれた。

 

「できると思う」と「できる」の壁

この子は、本気で行けると思っていた。

不登校初期からずっと、一貫して出来ると思っていた。

今は行かないけど、自分はいつでも復帰できるって。

 

でも、実際は違った。

「出来ると思う」と「出来る」の間には、大きな壁があったのだ。

 

 

これね。

相当しんどかったはずだ。

めっちゃ傷つく。

 

出来ると信じて疑わなかったことが、やっぱりできなかった。

自尊心へし折られるやん。

 

多分だけど、

その気になれば学校へ行ける。

つまり、その気になれば「普通」に行動できる。

ってことは、自分には「普通」に振る舞う能力がある。

敢えてやらないだけで。

と思っていたはずだ。

 

なのに、そうじゃなかった。

「普通」が出来ない自分。

ショックだろう。

自分への期待が粉々に打ち砕かれた瞬間だ。

ショックじゃないはずがない。

 

 

でもこの子は受け入れた。

みんなやってる「普通」のことが、自分にはできないと。

その上で自分で転校を決め、自分でそれを報告した。

 

診察室に入るなり、いつもと違う表情で、緊張して、言葉に詰まりながら。

喋っているうちにその時の気持ちが蘇り、涙を流して。

 

でも、はっきり言ったんだ。

 

「自分で決めました。

後悔はありません。」

 

 

な、な、なんてカッコイイんだ!

 

 

きっとこの子は大丈夫。

この経験は強い。

自分の弱さを受け入れ、咀嚼し、前を向いた。

今後の人生で生きてくる経験だ。

こんな子は、次のピンチに強い。

 

もちろん吹っ切れたとはいえ、まだまだ悲しい気持ちが湧いてくるだろう。

ゆっくりでいいから、その気持ちにちゃんと向き合い、きちんと味わってから次のステージに進んでほしい。

 

この子はきっと大丈夫だ。

 

そのままの自分を認める

自分の弱い部分を認めるって、すごい勇気だ。

「理想」と「現実」を受け入れるのも。

等身大の自分をそのまま見るって、めっちゃ勇気だ。

 

僕はいい大人なんだけど、果たしてコレが出来ているのだろうか。

常々疑問に思う。

自分を偽ったり、大きく見せようとしたり、弱い部分を隠したり。

やっぱりしちゃいがち。

人には「そのままでいいよ」って言ってるんだけどね。

果たして自分は本心から「このままでいい」と思えているのだろうか。

 

 

子どもの時分にコレが出来たこの子は、本当にすごいと思う。

多分、次の場所でも同じことが出来るだろう。

 

数年、数十年後、人生のステージが変わっても、きっと出来る。

その都度自分をみつめ、地に足をつけて考えることができる。

もう、人生安泰なんじゃないかとすら思う。

 

とても大事なことだ。

難しいけど、でも出来ると報酬がめっちゃデカい。

僕もダメな自分を、ダメなまま認めないとな。

この子に合わせる顔がない。

 

…………本当は松潤に似ても似つかないんですスイマセンでした!

 

この子の親御さんがどんな対応だったかというと。

不登校初期からめっちゃ骨拾いスタンスでしたヨ。

骨を拾ってもらえる安心感があるから、この子はそのまま自分を受け入れられたのでしょうね。

ちなみにこの親御さん、表面的には本人の気持ちを尊重して待ちの一手でしたが、実は転校候補の学校情報を前々からこっそり調べていたようです。

素晴らし過ぎる。

pediatrician-p

View Comments

  • 普通 っていう言葉が 時には 人を鋭く傷つける。。。
    読んでいて 涙が出ました。

    いいこと あるといいな。

  • P先生

    こんばんは。
    読んでいて涙が出ました。
    その年齢で自分と向き合い、できない自分を受け入れるって本当にすごい事ですよね。
    ましてやみんなが普通〜にしてる、学校生活。
    その頃って学校生活が全てで、それを方向転換する決断力と勇気!!頭が下がります。

    大人になったら、もういろいろ捨てまくりですよ(笑)あ、わたしやっぱりこれは向いてないんだな〜。苦手だし、できないんだなって。
    でもそう言ってると、やれるよ!ってゆう人が助けてくれたりします。
    いつかの先生の記事みたいですね。
    だから、今は苦手な事できないことは口に出して周りに助けてもらいまくります。

    先生まだ松潤引っ張ってるし。(笑)

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