Categories: 発達障害

自閉症が『治る』⁉︎

自閉症、自閉スペクトラム症(ASD)は、『治る』のか?

※治す必要があるのか? の話はここでは置いておいて。最近ASDを指摘されてテンパっている親御さん向けの話です。

基本的には持って生まれた特性なので、大人になっても変わらない。

のだが、たまに『治った』例を経験する。

え、

治るの?

治るんですよ。ごくたまに。

具体的には小さい子。

1〜3歳くらいで、自閉症の特徴が色濃い子。

健診でひっかかって受診することが多い。

言葉の遅れ、おうむ返し、クレーン現象、逆さバイバイ、こだわり・・・。

この子は自閉傾向があるなぁと思う。

でも、視線が合わないほどではない。

スペクトラムで言うと、6〜8(10段階)くらいかなぁ? という子。

この子を定期的に見ていくと、徐々に言葉が増え、コミュニケーションが上達していく。

クレーン現象もなくなり、こだわりやかんしゃくで困ることも減ってくる。

小学校入学の頃までに、自閉症の特徴がほぼ目立たなくなる。

普通級に入り、その後も問題なく学校生活を送り、晴れて通院終了、卒業となる。

いるんです、実際。

自閉スペクトラムの9〜10、視線が合わないくらいの子だと、小さいうちに診断を付ける。

この子たちの特徴が消える経験は、僕にはない。

でも上記のような子だと、正直どう転ぶかわからない。

特徴が薄まってくる子もいるし、年齢とともにもっと特徴が目立ってくる子もいる。

「まだ小さいのでなんとも言えません。様子をみましょう。」

これを言うのは、こんなとき。

年長さんくらいで集団行動がとれるか、コミュニケーションがどうかをみて、診断や学校をどうするか相談することにしている。

だから、

「まだ小さいのでなんとも言えません。様子をみましょう。」

と言われたとき。

煙に巻かれたような、誤魔化されたような印象を受けるだろうが、そういうことなんです。

嫌がらせではない。

そんな時でももちろん、診断に先行して療育を開始するのは大賛成。

早めに開始して悪いことはない。

小学校入学時に、継続するかどうかを療育の側が判断すると思う。

それ以外の場合。

ある程度の年齢になって自閉症の特徴がある場合は、基本的にはその特徴を持ったまま成長すると思ってもらってよい。

「基本的には」というのがミソ。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)というものがある。

療育が有名だが、学校や自宅でも行える。

実際に困った場面を想定し、こういうときはこうする、とパターン化して学ぶ。

「登校したらまず〇〇、次に●●する」

「授業中は座る」

「○○と言われたら△△と返す」

「こんなときは□□と伝える」

など。

自閉スペクトラムの子は、コミュニケーションの困難さがある。

場面が読めない、質問の意図がわからない、裏の意味がわからず字面通り受け取る、など。

困る場面はある程度決まってくるので、想定して先に正解を用意しておく。

何度も繰り返し、定着させる。

自閉症の子は、パターン化が得意だ。

すると、同じ場面に遭遇した時、「こんなときはこうすればいいんだ!」と正しい行動がとれる。

ここ、進研ゼミでやったとこだ!

人は学べる生き物だ。

コミュニケーションが分からなければ、学べばよいだけの話。

自閉症が『治る』というのは、コミュニケーションの問題がなくなるという意味だろう。

自分で空気を読んで対応できるという意味。

でも厳密にこれをクリアしていなくても、

普段の生活、友達との会話でさほど困らずに適応できている子は、たくさんいる。

すると、『自己肯定感』が上がる。

「自分はできる、大丈夫」と思える。

これが何より大事だと思う。

発達障害の子は、自己肯定感が低下しやすい。

「なんかうまくいかない」

「自分ばっかり怒られる」

「友達に嫌われている」

そんな気持ちを抱きやすい。

すると

「自分は悪い子だ」

「どうせ自分がいけないんだ」

「誰もわかってくれない!」

落ち込み、イライラして、問題行動が増える。

すると余計に怒られ、周囲から嫌われ、さらに自己嫌悪に陥るというスパイラル。

『二次障害』という。

もともと持っていた性質以上に、しんどくなる。

必要以上に乱暴になったり、自暴自棄になったり。

発達障害のゴールは、障害を『治す』ことではない。

この二次障害をいかに起こさないか、自己肯定感を下げないかだと思う。

二次障害を起こしながら『エセ定型発達』に仕立て上げることに、何の意味もない。

発達の特性のある子がその子のままで認められる環境を、大人がいかに提供してあげられるか、だと思う。

他にはない才能を持った子たちだ。

自己肯定感さえ下がらなければ、発達障害なんてものともせず、

むしろ自分だけの特別な才能として開花させるものと僕は思っている。

pediatrician-p

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