発達障害(今は神経発達症というらしい)の特性のある子。
ASDとかADHDとか、グレーとか。
やらかすよね。
まーやらかす。
僕なんか、診察室で
「まぁやらかすよねアッハッハ」
とか言ってる立場だから気楽なもんだけど。
そのやらかしに付き合い、日々向き合っている親御さん。
マジ大変ですよね。
いやマジで。
ご苦労の一端を察する出来事があったので、ここに記録させてください。
ASDの子。
診察にて、何か考え込んだと思ったら、ふいにこんなことを聞いてきた。
どうして診察室4がないの?
はて、診察室4がない、とは?
少し考えて、思い当たった。
ここの診察室は横並びになっており、順に診察室1、2、3、そして5だ。
4は欠番なのだ。
ほぅ、細部までよく観察している。
僕は感心した。
4番診察室がない理由は、僕が決めたんじゃないので知らんけど、きっと病院でありがちなやつだと思う。
『死』を連想させるから的な。
知らんけど。
「病院では、縁起が悪いから『4』という数字を避けるんだよ。」
そう説明し、僕はふと思った。
ASDのこの子に、『縁起』なんて理屈にならないふわっとした説明、通用する?
そもそも1年生に『縁起』とか『不吉』みたいな抽象的な言葉が理解できるもの?
僕は、さらに考える。
この病院では4番診察室も4号室も欠番だけど、別の病院ではその限りではない。
4号室も9号室もフツーに存在する病院だって、ゴマンとあるだろう。
この子が別の病院へ行った際、
この病院は『死ぬ』の4がある!
ねーねーお母さんおかしいねー4号室があるよ!
病院ではフツー4は使わないのに、エンギが悪いよねー!
とか大声で言ってしまったらどうしましょう!
親御さんのアタフタが目に浮かぶようだ。
幸いここは小児科なので、『死』というワードに鈍感。
多少騒いでも気にする人はほぼいないだろう。
しかしそうじゃない科に、今後この子が顔を出す可能性も十分あるわけで。
お見舞いとか。
今ここで「4=死」で忌むべきものとすり込むのは、避けた方がよさそうだ。
「4号室がない理由は、4が不吉と考える人もいるからなんだけど、全部の病院でそうってわけじゃないんだ。
外国だと13号室がなかったりするしさ。
あってもなくてもいいんだよ。
明確な理由があるわけじゃなくて、ゲン担ぎっていうのかな……あ、ゲン担ぎの意味が分からないって?」
誤解のないよう正確に話そうと思えば思うほど、ドツボにハマっていく。
お母さんもしどろもどろ、
「そ、そうなのよ。絶対ってわけじゃないのよ。」
なんて調子を合わせてくれて。
くそう。
だから設計のときに、診察室の名前は小児科らしく、
『パンダ』
『うさぎ』
『コアラ』
『ハダカデバネズミ』
にしようって僕は提案したんだ!
ASDは一般に、モノの仕組みや理屈が好きだ。
理屈(この場合、4番診察室がない理由)に興味を持ったのであれば、きちんと説明してあげたい。
その際、「そーゆうもんなのよー」では納得しづらいのがASD。
ふわっと空気でとか、行間を読むとかは苦手。
より精確で仔細な説明が求められる。
今回のような抽象的な内容でも、例外ではない。
同時に、一旦納得したルールには頑なだったりする。
「臨機応変」が苦手。
病院では4は不吉なのに、こっちの病院では存在しているだとっ⁉︎
解せん!
となる可能性が高い。
この点も踏まえた、潰しの効く説明が求められる。
……と、ここで思う。
ここまで先回りして、この子に合った説明をする必要があるのか。
僕は途方に暮れた。
大変すぎる。
この子に「診察室4がない理由」を過不足なく説明するのは、針の穴に糸を通すようなものだ。
超ムズい。
しかしここで対応をミスると、未来にトラブルの種を撒いてしまうことになる。
これは避けたい。
慎重な対応が求められる。
検討を祈るっ。
この辺、僕は診察室という刺激が少なくトラブル許容度も高い環境にいるので、差し迫って考えさせられることはほぼない。
しかし親御さんや先生は違う。
家で、学校で、街中で、お店で、道端で、公園で……。
こんな対応を、日々求められているのだな。
いやはや。
特性を知って、やらかしを先回りする。
口で言うのは簡単だ。
でも実際にやるとなると、常に気を張って生活する必要が出てくる。
一瞬の気の緩みが大惨事につながることもあるだろう。
今まで培ってきた「まぁこんな感じ」が通用しないこともザラだろうし。
お疲れ様です。
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タイミングを逃して一つ前の記事にすみません。
先生っ!!
そのネーミングだと、
「ねえねえ、どうしてハダカデバネズミだけ、字が小さいの??書けないなら看板を大きくすれば良いんじゃない?ねえねえ!」
とならないですかね?と思うので、植物シリーズで
チューリップ、さくら、ひまわり、ヒロハヘビノボラズでお願いします。
いつも、本当に助けて頂いている、自分の頭も散らかりがちの母です。
先回りは、頑張るものの、自らの特性も邪魔して空回りがち。余計にはまることも多々ある毎日です。。
最適な締めだと思います。
だってソレしか言えないですよね。
「お疲れ様です。」
仕事終わりの挨拶みたいなもの。
うちの子、短期入院ではやらかさないから、やらかす為に長期入院することが決まり・・・
母は肉体的には楽になったけど、精神的にはさらに疲れております。
自分にも特性あるなぁ~って母は
先回りの仕方も主観過ぎてズレて失敗しちゃうみたい。
ちょwwお疲れ様ですまる、で締めくくられるなんて予測してなかったwww
「P先生はなんとなくこんな感じで結論や次回予告があるよねー」が通用しなかった〜。
...こんな記事の感想に限らず、曖昧でボワッとフィーリング重視のやり取りを好む一人です。
そんなボワッと母が、子供のナゼよ何でよどうしてよ?をトラブルを起こさないように先回りしてシナプス繋げて説明したとて、やらかさない保証はどこにもないのですよね。
なので、最近は本当に危ない事と、ご時勢柄で衛生面で人が嫌がりそうなこと以外は先回りせず立って木のように見ることにしています(親?)
我が子は年中のASD児で、もっと小さい頃のカオスに比べたらだいぶ落ち着きつつあります。でもやらかす。そして、これからもやらかすでしょう。
当人にはやらかしたり失敗したことが悪いことではないと言い聞かせています。次はうまく立ち回れる、トラブルを回避できるための経験だと思っているので。
子供とはやらかし体験をトレースして一緒に理屈を考える関係でいたいです。
先回りコースも後追いコースもしんどいの極みでしょうか。
皆さま、毎日お疲れ様です。
私も唐突な終わりにビックリして、思わずコメント書いちゃってます。
えっ終わり!?書きかけ!?次回に続く!?と心の中で動揺しました(笑)
息子は6年生、ADHD・ASD・LDですがまあいろいろとやらかしてきました。
今日も学校に呼び出されてきたところです(笑)
5年間、担任が変わる度に気をつけてほしいことや適しているであろう接し方などを伝えてきましたが、やらかすときは斜め上を行くので、先回りして取り除くのは無理だな…とあきらめました。
今年度の担任には『日々の接し方は先生にお任せします。何かトラブルなどありましたら、いつでも一緒に考えさせてください。』というような丸投げ方式にしてみました。
学校との関係がそこそこうまくいっているからできることだと、ありがたく思っていますが…。
でも『◯◯って何?』とか聞かれると、変な誤解をしてインプットしてしまわないように、説明長くなっちゃいますよね(笑)
長すぎて、後半は本人聞いてなかったり(笑)
皆様、おつかれさまです。
(あれ?確かにこんな締め方になっちゃいますねー(笑))
P先生
こんばんは。今日の記事、まさかお疲れ様です。で終わると思っておらず、だいぶビックリしました(笑)
ちょ!!えっ!!終わり?
と、かなり動揺。
とにかく出来るだけのことは先回りして回避したい。そのための準備は惜しまずやってきたつもりですが、学校の先生(担任ではなく通級)や心理士さんからはお母さんが先回りする事で子供のできたはずの経験する場を奪っている。みたいな事を言われました。
もうじゃあ、どうしたらいいの!!状態。
本当に疲れます。