Categories: 心理学

「魔法」が効果を発揮したケースをご紹介

僕のおすすめする魔法の言葉。

 

あなたはそう思うのね。

 

とりあえず、「あなたはそう思った」という事実だけ肯定しといてくださいってやつね。

トラブルがあったとき、アドバイスする前に、とりあえず「あなたはそう思ったのねー」と言っておく。

以前からおすすめしてるんだけど。

 

効力を発揮したケースがいくつかあったので、紹介させてください。

 

こんな子がいました。①

自閉スペクトラム症の子。

認知の歪みがある。

 

この子は、特に学校の支援員さんに不信感を持っていて。

支援員さんの言うこと為すことなんでも被害的に受け取ってしまっていた。

(支援員さんの名誉のために言わせてもらうと、この方の対応は決して悪くない。むしろとても良くしてくださっている。でも距離が近いゆえに、どうしても悪者になってしまう。このようなことは往々にしてある。ホント、お疲れ様です。)

 

 

あるとき、ご立腹な様子でこの子が言うのだ。

 

男の子
支援員さんが、僕が授業中にお菓子を食べていたって言うんだ!

 

えっ、授業中にお菓子⁉︎

 

男の子
もちろん食べてないんだけど、「今急いで飲み込んだでしょう」って。

食べてないって言っても信じてもらえず、廊下に出された!

 

これを聞いた母は。

どうしたと思います?

 

まず、母はこの子の特性をよく分かっており、そのような事実はないだろうと考えた。

(ここがまずスゲーよね。)

 

その上で、でも『この子にとっては』事実なので、肯定的に対応した。

(ここもマジでスゲー。)

 

そう……。

それは辛かったわね。

 

受診で、このいきさつを話してくれたんだけど。

この時点ではまだこの子はご立腹で。

 

男の子
先生がひどいんだよ!

大嫌いだ!

 

「多分、そんな事実はないんです」

お母さんが、僕にこっそり耳打ちする。

僕も同感。

お母さんと一緒にその子をなだめたのだった。

 

 

数ヶ月後。

急にこの子が言うんだ。

 

男の子
お菓子のこと、やっぱり先生はそんなこと言ってなかった。

僕の勘違いだったんだ。

ひどいことを言って先生を傷つけた……。

 

聞くと、突然そう思い至ったのだそうだ。

 

あの時は、支援員の先生がひどいことを言ったと本気で信じていた。

でも、急に腑に落ちた。

 

あれ?

そんな事実はなかったぞ?

 

ここまでに、半年ほどの時間が経過していた。

 

 

ASDタイプの子は、認知の歪みを持つことがある。

事実を湾曲して受け取る。

時には事実無根の物語を作り上げたり。

そりゃもう、完全に事実無根。

イマジネーションの世界だったりする。

そして大抵、被害的でネガティブな内容だ。

 

これ、本人は悪気なくて。

特性として、どうしてもそう思ってしまうってこと。

つまり「本人にとっては」事実なのだ。

 

 

このケースで、もしお母さんが学校に事実確認をして、

 

確認したけど、あなたの勘違いよ。

金輪際こんなことを言うんじゃありません!

 

とか叱っていたら。

この子はきっと、自分で認識を修正することはなかったんじゃないかと思うのだ。

お母さんが一旦受け止めてくれたからこそ、「よく考えてみると違った」と思い至ったんじゃないかなー。

僕はそう思う。

 

まずは自己中でOK

この子はしっかりASD特性があるんだけど。

そうじゃない子でも、同様なことって結構あって。

 

自分はそう思った」って受け止めてもらって初めて、相手の視点に立てる。

 

  • ひどい!
  • 理由があって〇〇したのに!
  • 自分はつらかったんだ!

 

こんな被害的な気持ちを、まず肯定する。

ここがスタート地点。

 

自己中でいい。

超自己中でオッケー。

ネガティブな感情を吐き出す。

相手の立場にたったり、じゃあどうすればよかったか、建設的に考えるのはその後だ。

 

 

だって、みんなそんなもんでしょ?

トラブルが起きると、まず、自己中で自己保身な考えが出る。

人間誰しもそんなものだよね! って思うんだけど。

 

ADHD特性のある子なんかわかりやすくて。

叱られると、しょーもない嘘つくじゃん?

すぐバレる、浅はかな嘘を。

そんなもん。

 

もしくは、自己中な屁理屈で反論してきたり。

そんなもん。

 

 

僕自身を考えたって、すぐ保身と言い訳を考えるもの。

クソみたいな人間だ。

そんなもん。

 

でもこれが自分だって肯定したら、すごく生きやすくなったように思う。

まず保身したら、次に素直に相手の言うことを聞けるようになった。

保身せず、「まず事実確認と反省をしなきゃ」って思うのは、僕レベルじゃ難しい。

そんなもん。

 

こんな子がいました。②

こんな子もいた。

 

いままで、めっちゃ「いい子」で生きてきた子。

発達障害特性の、特にない子。

 

あるとき爆発し、不登校に。

我慢しすぎたんだね。

 

今まで、不平不満なんてひとつも言わなかった子が。

言うわ言うわ、めちゃめちゃ言う。

 

女の子
先生がひどかった!

 

女の子
友達にいじわるされて悲しかった!

 

女の子
お母さんは弟ばかりひいきしてる!

 

これまでの「いい子」がウソみたいに、めっちゃ文句言う。

 

 

そして多分、事実は異なる。

この子が思うほど、虐げられてきたわけじゃない。

 

でも、この子はこう思った

それは事実。

 

 

お母さんは、根気強く付き合ってくれた。

 

あなたはそう思うのね。

 

魔法の言葉を添えて、傾聴の姿勢でいてくれた。

  • そんなことなかったじゃない!

とか、

  • そんなワガママばかり通用しないわよ!

とか、言わなかった。

 

 

じきに、この子は変わった。

 

女の子
お母さんは最近、話を聞いてくれるようになった。

 

女の子
お母さんが弟をヒイキしたのも、今なら理由がわかる。

私がしっかりしてたから、弟に目が行くのは当然だ。

 

女の子
先生も、私ばかりを叱ったわけじゃなかったんだ。

 

 

この子には、発達障害特性はない。

だけど、まず気持ちを吐き出したら、視野が広がった。

客観的に、建設的に考えられるようになった。

 

特性関係なく、こんなことって結構あるように思う。

 

まとめ

日常生活の小さなやりとりでも、結構あるんじゃないですか?

まず話を聞いたら、あとで子どもが勝手に意見を修正すること。

 

子どもには(大人にも)、自分で考えを修正する力があるように思う。

周りが教え込まなくても。

 

いわゆる「しつけ」に頼らなくても、子どもには自分で適応する力がある。

「ちゃんとしつけなきゃワガママな子になる」って、そこまで怯えなくてもいいんじゃないかな。

と、僕は思うんだ。

 

 

そして、自分で気づくと、別の場面にも応用できる。

一度腹落ちすれば、似た場面で臨機応変に考えられる。

この力ってすごく重要だと思う。

 

これを引き出す魔法の言葉が、コレなのだろう。

 

あなたはそう思うんだね。

 

魔法が効くには時間がかかる。

即効性はあまりない。

でも、効いてくれば効果絶大だ。

pediatrician-p

View Comments

  •  兄妹でASD傾向ありです。認知の歪みからけんか。兄の方がらあきらかに事実無根の話を作り妹を泣かしてる。手まででてる。あなたはそう思うんだね。って言ったら妹が荒れる。兄はそう思うんじゃなくて、そうなんだ‼︎ってヒートアップ。
     使い方間違えたかなぁ。我が家は相手がその場にはいない時限定かも。気づきを待つのもすごいです。

  • 「あなたはそう思ったのね」たとえ事実無根でも誤解だと思っても、相手がそう思ってしまったことをいったん認めるのは大事。なるほど、心がけたいと思いました。

     でも、本題とちょっと離れて申し訳ないのですが、この例の場合は相手が支援員さんで障害に理解があるから、悪くいわれても気にせず接することができたと思うのですが、子ども同士だとそうはいかず、トラブルになりますよね。
     この例の親御さんのように自分の子どもの特性を理解している方なら大丈夫だと思うのですが、おそらく発達グレーなんだけど診断がついてないからか、親が子どもの言い分を鵜呑みにして「うちの子をいじめたでしょう。」とすごい剣幕で小学生の息子が直接責められ、誤解だと説明してもわかってもらえないことがありました。
     うちの子からしたら理不尽で腹がたつので、その子とは遊ばなくなったんですが、相手の子は何かとかまって欲しくてしつこく話しかけたりからかってきたりするので、その後もトラブルが続きました。
     息子はHSPタイプでもともと学校がしんどかったし、他に要因もあったのですが、この子とのトラブルがなければその時点では不登校にならなかったのでは、そのとき何か親として出来たことはなかったのかと、つい考えてしまうことがありました。
     担任の先生にも相談しましたが、席を離すぐらいの対処しかしてもらえませんでした。明言はしませんでしたが、先生はその子の特性についてわかっていたようです。
     息子は中学も不登校のあと、今は高校に進学し、休みがちながらも頑張っているので、うちのことは今更なんですが、知人のお子さんが似たようなことで困っていたと聞いて、思い出してしまった次第です。
     

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