僕の外来にはいろんな困りごとを抱えた人がやってくる。
マジ色々。
でね。
見ていくと、うまくいく人のパターンってそれぞれだ。
想定外のやり方でうまくいっちゃう人も結構いる。
でも、こじれる人はみんな似た経過を辿る。
失敗のパターンって決まってるような気がするのよ。
不思議なことに。
ってことで、典型的な「こじれるパターン」。
ADHDの子の話を聞いてあげてほしいって話。
ADHDは理屈っぽい子が多い。
ワケ分かんない行動には、本人なりの理由がある。
理由はあるんだけど、それが親としては納得いかない屁理屈であることも多い。
それとこれとは話が別でしょう? とか。
1指摘したら10になって返ってきたり。
これさ。
腹立ちますよね。
やるべきことをやってないから言ってるのに、
まー四の五の四の五のと。
やってないのは事実なんだから、さっさと手を動かしなさいよ。
口じゃなくて!
自分が9悪くても、相手に1の非があると絶対に引かないし。
だからって、年下相手にキックはダメでしょ!
腹立つ気持ちは非常に分かる。
でも、聞いてあげてほしいんだ。
そういった面もあると思う。
実際、ADHDは叱責されるのを回避すべく、浅はかな嘘をつくことがある。
やってない宿題を「やったよ!」とか。
あとで絶対バレるのに。
だもんで、屁理屈も口から出まかせと思われがち。
だけど本気でそう思っていることも多分にあると僕は思うんだ。
本当に、このアニメが終わったら勉強しようと思っていたのだ。
なのに水を差されて、ガチでやる気がなくなっちゃった。
自分でやる気を出して実行する計画を立てていたのに、小言を言われた。
まったく信頼されてないし!
激おこ!
確かに、幼稚園の弟にドロップキックかましたのは悪いと思っている。
でも、私の大事な文房具を触らないでほしかった。
以前それで大事にしていた消しゴムを割られたのだ。
「私の持ち物を触らないで!」という点に今私はフォーカスしており、この点においては私の主張に正当性がある!!!
こんな感じ。
本気で、その屁理屈の理屈を主張している。
ガチで怒ってる。
これさ。
聞いてやっちゃあもらえませんか?
分かるよ!
そうやってやるべきことをやらず、尻拭いはいつも親御さんだ。
やろうと思っていたなんて信用できないし、実際にやってから文句を言え。
そう言いたい気持ちはよく分かる。
持ち物を触ることより、弟への暴力の方が怪我につながるからずっと重要。
まずそっちやろ! 理由はどうあれ蹴っちゃイカン! という気持ち、よく分かる。
でもさ。
ぐっとこらえて、先に子どもの主張を聞いてあげてほしいんだ。
口を挟まず、とりあえず「その子はそう思った」って事実を承認してあげてほしい。
お説教はその後でお願いしたい。
だってさ。
だって、そうやって大人に対する不信感を募らせたADHDが、めっちゃ多いんだもん!
みんな似てる。
理屈っぽくて、反抗的だ。
僕みたいな第三者が聞くと、「だってあの時は〇〇の理由で△△したんだよ」と教えてくれる。
でも親も先生も聞いてくれず、「手を出した方が悪い! 謝りなさい!」って。
どんどん頑固に、反抗的になっていく。
反発心からわざとトラブルを起こしたり。
※多分、大人の反応を試している。次こそは「やっぱりあなたは悪くない」って言ってもらえるんじゃないかって。でもやっぱり叱られて、微かな希望は打ち砕かれるんだけど。
いわゆる『乱暴者』になって、学校でも家庭でも扱いに困り、医療の門を叩くという寸法だ。
似てるのよ。
僕みたいな第三者が聞くと、みんな『理屈』を持っている。
聞いてくれない周囲の大人に怒ってる。
話を聞いてください。
こんな子たち、まず先に彼らの『理屈』を聞けば、その後大人の『理屈』も入ります。
理屈っぽい子だもの。
「でもやっぱりやるべきことを先に終わらせたほうがいいよね」
とか
「キックは良くなかったよね、口で言おうね」
とか、全然理解できる。
なので、先に彼らの理屈を聞いてやってほしいんだ。
自分の話を聞いてもらえない子が、人(大人)の話を聞けるハズがない。
この子はさらに、友達の話も聞けなくなる。
自分の理屈を力づくで押し通そうとする。
自分がされたように。
すると、この子はどんどん孤立していっちゃうと、僕は思うのだ。
いわゆる『乱暴者』は、まだいいのかもしれない。
周囲から見えやすい。
トラブルを起こし、支援につながりやすいから。
想像だけど、怒りが自分に向くタイプも一定の割合でいそうだ。
叱られたら、自分を責めるタイプ。
こっちだって非常に困りそう。
自分を押し殺し、必死で適応しようとしているかもしれない。
納得いかなくても、「とにかく自分が悪いんだ」って自信をなくしていってるかも。
「またやっちゃった、自分が悪い」って。
自分の理屈は必死でひっこめて。
きっとクラスではあまり目立たない。
親御さんも把握していないかもしれない。
でも人知れず傷ついている。
こっちのタイプの方が、発覚しにくい分しんどいのかもしれないなーなんてちょっと思った。
こじれるケースは大抵似ている。
ADHDタイプは、話を聞いてあげてください。
二次障害を起こさないことが、何より大切だ。
表面上の行動の是正だけでは解決しないと、僕は思う。
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表題の件、おっしゃる通りだと思います。
あえて少しずれたケースを。
私が小学生くらいの頃、外でちょっと嫌な事が重なって嫌な気分になっていると、母が良かれと思ってしてくれた事が負担になって、軽い八つ当たりをしちゃう事があったんですよね。悪かったなとは思っても、してくれた事が負担だった気持ちも、背景にある嫌な気持ちも言いたくなくて、そのまま離れる。そうすると父が理由を聞きにやってきて、すぐには引き下がらない。
その時の父の気持ちを今になって勝手に推測すると
妻は悪くない(その通りです)。
娘も悪い子じゃない(ありがとう)。
何か理由があるはずだ(あります)。
理由を知れば妻も心が軽くなるはずだし、今後同じ事を繰り返さないためにも役に立つ(その通りなんだけど、理由を言わない理由も察して。離れて気が落ち着いたら、何もなかった様に笑顔で母に接するつもりだったから、ほっといてほしかった)。
仕事で父にかなり大きなストレスがあるのは知っていたので仕方がないんですが、当時の父とはほぼ雑談した事がない。良かれと思って蘊蓄を語ってくれる事はあったし、それはそれなりに面白かったし後で役にも立ったけど、子供の話を普段積極的に聞く様な父親ではなかったんですよね。そんな人にこじれた時だけ理由を聞かれても、本心を答えられるわけもない。無難な答えを絞り出しながら、その答えが自分の本当の気持ちとどんどんずれていくのが、すごく嫌でした。
まあでも、私が初めての子を里帰り出産した時、父が慣れた手つきでベビーバスで子供を洗ってくれたのを見て、こうやって育ててくれたんだなと思いました。次の子の里帰り出産の時に、父は普段しょっちゅう腰が痛いと言ってるのに、私が入院した後、上の子が寝るまで2時間半、ずっと上の子を抱っこして歩き回ってくれてたそうです。昔、私が自分に本当の気持ちを話したいかどうか父が考えなかったのは、自分がいい父親だと思ってたからなんだろうな、と振り返って思います。
要するに、P先生はいつも一つの話では一つのテーマに絞って書かれているから今回は敢えて書いてらっしゃないけど、今回の「理由を聞いてください」の前提条件には、以前書かれていた、「お子さんと普段から雑談をしてください」があるんだろうなと思ったので、昔話を書きました。