Categories: 発達障害

「発達障害ではなさそう」って言われたけど…… 〜「ない」ことの証明〜

我が子に気になる点がある。

 

もしかして発達障害?

 

でも病院に行ったら、

「発達障害っぽくはないと思うけど、なんとも……」

的な歯切れの悪いことを言われた。

もぅ、「違う」か「そう」か、はっきり言ってよ!

 

 

もしくは、

「この子は発達障害ではありません」

って言い切られた。

ホッとしたような、でもじゃあこの特性なんなの? って気持ちもあり……。

 

診断の難しさ

発達障害の診断は難しい。

「数値が正常範囲を逸脱しているので、病気です」

というような基準は存在しないし。

※何度も言ってるけど、自閉スペクトラム症(ASD)やADHDを診断する検査はないヨ。

 

明らかに当てはまるなら、さほど難しくない。

「この子は明らかにASD (ADHD)だね」って場合。

誰が見ても診断するだろう。

これなら僕でもわかる。

 

でも、グレーな場合。

医者によって、診断する人と、しない人と出てくる。

僕自身、診断するほうがその子にとってメリットがあるのか、それともしない方がいいのか、慎重に考えるよう意識している。

※ちなみに僕は積極的には診断しないスタンス。どうしてもレッテル貼りのリスクを考えちゃう。

 

こと左様に発達障害の診断は難しい。

 

「ないこと」の証明

さらに。

輪をかけて難しいと思うのは、「あなたは発達障害ではありません」と言うこと。

どうしても「発達障害らしさはあまり見られませんけどね……」的な、なんとも歯切れの悪い言い回しになってしまう。

 

だって、特性が皆無の人ってすごく珍しい。

誰だって多少の発達特性を持つ。

ゼロの人なんてめったにいないんだもの。

 

 

「ない」を証明するのって難しくてですね。

多少なりとも「ある」のはわかりやすい。

「多少のこだわりがありますね」とか、「不注意がありそうですね」とか、言いやすい。(診断するかどうかは別にして)

 

でも「ない(ゼロ)」を証明するのはすげー難しい。

「こだわりは皆無です」「不注意はゼロです」とはなかなか言えない。

 

 

ほら、医療系の話題で、「ないです!(キッパリ)」ってあまり聞かないじゃん?

例えばコロナ関係だと、

  • 子どもは重症化しません!(キッパリ)
  • ワクチンを打てばマスク外して大丈夫!(キッパリ)

とか言ってくれれば安心なのに、そうじゃないでしょ?

 

 

家族「おじいちゃんの病気、どうでしょうか……?」

医者「これまでの検査では再発の兆候は認められていませんが、大丈夫とは言い切れません。注意深く見守ってください。」

 

↑この感じ。

医療あるあるじゃん?

 

結局大丈夫なの、大丈夫じゃないの?

どっち⁉︎

 

医者なんだから、病気があるのかないのかハッキリ言ってよ。

もう大丈夫、治ったよ!(イエーイ)

って言ってよ!

 

医療者の一人として謝ります。

歯切れが悪くて、わかりづらくてゴメンナサイ。

正確さと分かりやすさって反比例するんだ。

「病気がありました」は言えるけど、「病気はありません」はなかなか言えないのよ。

ゴメンやで。

 

 

でも、日常生活でもそうじゃん。

「このやり方では絶対に失敗する」とは言い切れないじゃん。

ウチの子が総理大臣に絶対にならないとは限らないし。

明日隕石に当たって死ぬ可能性もゼロじゃないわけで。

可能性はスゲー低いんだけど、でも「ない」とは言い切れない。

 

唐突だけど、僕はオカルトが好きなんだけど。

アレだって「そんなものはない」とは証明できないわけさ。

輪廻転生はあるかもしれないし、幽霊も、パラレルワールドも、異世界も、きさらぎ駅も、時空のオッサンも、あるかもしれないいるかもしれない。

ヴォイニッチ手稿はやっぱりこの世のものじゃないのかもしれないじゃん?

 

「否定できない」ってところにロマンがあるよね。

そこにシビれる憧れるゥ!

※ちなみに僕は野次馬根性からオカルトが好きなだけで、スピリチュアル系はまったくの無知です。たまにスピ系のコメントをいただくけど、まったくわからん。ごめんなさい。

 

こと左様に、「ない」ことの証明は難しい。

 

診断に納得できないとき

僕たち医者は、診察室での本人の様子と親御さんからの聞き取りとで発達障害の診断を行う。

だもんで、そのシチュエーションでは「なさそうだ」と思っても、実際にはそうじゃないことはままあると予想される。

 

その子の全てを見ているわけじゃないし。

むしろほんの一面しか見てないし。

 

「聞いた感じでは、発達障害はなさそうだけどねー」

 

チキンな僕にはここまでしか言えないわけだ。

 

「発達障害じゃありません(ビシッ)」

 

って患者さんは言って欲しいでしょう。

わかるよ?

でもその空気を感じても、なかなか言い切れない。

ゴメンやで。

 

 

僕はかなりのチキンなので、他の先生はもう少し分かりやすく言ってくれると思う。

「発達障害じゃないです」と言い切ってくれることもあるでしょう。

 

医療者の味方をして申し訳ないんだけど、これは全然悪い事じゃないと僕は思う。

「医者は発達障害じゃないって言ったけど、でもやっぱり発達障害だと思うんだけど。ヤブなの?」

気持ちはわかるけど理解してほしい。

 

あなたの言う通り、その子には発達障害があるのかもしれない。

でも、その医者が悪いわけでもない。

腹に納めてもらえると、医療者として嬉しい。

 

「ない」ことの証明は不可能に近いと、僕は思っている。

だから、その前提で動いて(考えて、解釈して)いただけると良いと思う。

pediatrician-p

View Comments

  • 先生、「悪魔の証明」ですね(•‿•)
    うちの子は「発達障害ではないけど、生きづらさはあると思う」と言われました。
    wiscⅣやその他の検査結果に腑に落ち「この子の特性を表しているな」と思いました。

    信頼している教育者に結果を見せて「こんな特徴があるので理解していただけるとありがたい」とお伝えしたら内容と子どものことを理解してくれつつ、「あまり結果を気にし過ぎるとレッテルを貼ることになってお子さんの可能性を狭めたりすることもあるし、お母さん自身も苦しくなるかもよ」と言われ、ハタと気づきました。
    程よく曖昧にするとかバランスをとるのも大事ですね。
    今日の先生のブログを読んで思い出しました。

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