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1歩先のこの子。3歩先のこの子。 〜井戸とトイレの話〜

お子さんの困った行動。

「ダラダラして宿題しない」とか小さなことから、「不登校」「万引き」「自傷」みたいな大きなことまで。

 

1歩先を見てください。

可能なら、3歩先を見てください。

 

僕だから言える、とっっっっっても大事なこと。

 

1歩先を見る

よくある相談。

 

勉強もせずダラダラYouTube。

「家を居心地よく」とは言うけど、このままじゃやるべきことから逃げるダメな大人になる気がする!

不安だ!!!

 

よくあるやつ。

 

この場合不安なのは親御さんで、「親の不安」と「子の不安」とを分けてくださいってのはもう絶対的にそうなんだけど。

それは大前提として、今日はその話じゃなくて。

『親の不安』と『子の不安』 外来を受診される方は何かに困って受診するわけだが、何に困っているか、すなわち主訴をまとめてきてくれると非常に助かる。 ...

 

親御さんは、今この目の前の「ダラダラYouTubeを見て勉強しないこの子」が気に食わないわけだ。

「今ココ目の前」を見てる。

※将来ダメな大人になる気がするってのは、「気がする」だけで将来を見据えているわけではない。ふわっと、雰囲気で言ってる。見てるのは「今のこの状態はなんか悪い気がする」ってところだ。

 

子供はそうなんだ。

今ココ目の前を生きる。

 

でも親御さんは大人なので。

亀の甲よりトシの功ってことで。

深呼吸して、ちょっと先を見て欲しいんですよね。

 

ちょっとだけ先。

一歩先。

 

例えば、数時間というスパンで。

今小言を言って、YouTubeをやめさせることは可能だろう。

でもその先。

 

YouTubeやめたら、勉強する?

ココを考えてみてほしい。

 

お小言を言って、YouTubeをやめさせる。

 

男の子
ハイハイやめればいいんでしょウルセーな。

 

毒づきながら、それでも一応やめるでしょう。

親ウルセーから。

 

で。

そのあとどうする?

どうなる?

 

そう。

漫画を読み始めるんだなコレが。

 

え、ウチの子は漫画は読まない?

じゃあゲームでしょう。

LINEかもしれない。

 

とにかく、勉強はしないでしょうよ。

 

なんか研究でも出てた。

ゲームの時間を制限しても、勉強の時間は延びなかったのだそうだ。

※詳細は失念。ググってください。

 

ゲーム(に類するもの)をやめさせても、勉強するわけじゃない。

別の遊びを始めるか、もしくはダラダラ無為に過ごすだけだ。

趣味の時間を制限したところで、勉強時間は延びない。

 

 

経験的にもそうでしょ?

この子、勉強する?

今までの経験からどうですか?

 

あなたはどうでした?

親御さんが子供だった頃、お小言を言われたら素直に勉強しました?

したとしても、身についた?

やっつけ仕事じゃなかったですか?

「あの時の小言は30年後とても役に立ったよ! ありがとう!」

って、自信を持って言える?

 

そんな人、かなり少ないのではないでしょうか。

少なくとも僕は、一切ない!

 

 

ヒトはダラダラしたい生き物。

ムリよ。

ムーーーリーーー。

 

3歩先を見る

ね。

1歩先を考えると、小言を言うメリットってあまりなさそうでしょ?

 

「今ココ目の前」じゃなくて、「1歩先」から見えてくるものがある。

 

この感覚。

「今ココ目の前」だけ見ても解決しない、って感覚。

 

これは僕がこの分野の診療を続けて、一番感じる部分。

たくさんの症例を見るとよくわかる。

たくさんの話を聞くと見えてくる。

 

 

もっと言うと。

3歩先を見る。

 

今YouTubeを制限して、その後どうなる?

3年後どうなる?

大人になったら?

小学生の時分に親が無理やり作った動画のルールが、独立後まで脈々と続いていくとは思えない。

 

ゴールは、この子が自発的にやるべきことをやる状態。

優先順位をつけて、自分で計画を立てて。

生活に差し障りのない範囲で動画が楽しめるってことじゃん?

そこがゴールでしょ?

 

じゃあ今動画を制限して、将来的な自主自律に結びつくかというと。

僕はそうは思えない。

 

厳しい制限をされていた子が、大人になってはっちゃけるなんてよく聞く話で。

ゲーム禁止だった子がゲーム漬けになったり。

お菓子禁止だった子がスナック菓子中毒になったり。

マジメだった人がいいトシして風俗デビューした行く末とか。

納得してない制限なんて、ストッパーがなくなった瞬間に爆発するだけだ。

 

これ、すごく大事だと思う。

たくさんの患者さんを見て本当にそう思う。

 

目の前の不安を解消するだけじゃ、何も解決しない。

 

ダラダラ動画を見て勉強しない子

親の強制!!!

動画を見ずに勉強する子

一時的にそうなっただけ。

これで安心ですか?

 

でも親の強制がなくなった瞬間、

ダラダラ動画を見て勉強しない子

 リバウンド!!!

動画を見ずに勉強する子

こうなるよ?

 

元の木阿弥じゃね?

単なるリバウンド王桜木じゃね?

意味なくね?

 

 

強制したところで、その子の「困った部分」はなくならない。

表面的な形を取り繕っただけ。

その子の本質は何も変わっていない。

 

大きなことでも同じ

YouTubeという小さな例を出したが、これが大きなトラブルでも同じだと思う。

 

例えば不登校。

無理やり登校させても、「学校がいやで行けなくなった子」はいなくならない。

合わない」という本質部分は変わらない。

 

学校行かない

↓ 学校は嫌だけど、親に責められるのはもっと嫌!!!

学校に行く

ってことじゃん。

 

地獄と大地獄を比較し、地獄を選んだってこと。

『井戸with貞子』か『トイレwith花子さん』なら……トイレかなってだけ。

 

どっちもイヤだけど、この二つしか選択肢がないならトイレ。

どっちもすげーイヤだけどっ!

 

コレ、解決?

 

花子さんとトイレでランデブー。

ハッピー?

 

井戸やトイレじゃなくて、もうちょっとこう、なんとかならない?

もう少し居心地のいい場所ってないの?

世界は広いんだし。

 

だから、登校がゴールじゃないっていうのは、そういうことだ。

目の前を取り繕ってもダメで、数歩先を見てくださいってこと。

 

まとめ

これは本当に強く思う。

僕の視点(たくさんの子供たちを見ている)からは、めっちゃよく見える。

 

目の前のことを取り繕って安心してちゃ、解決するものも解決しない。

1歩先を見て!

できれば3歩先を見て!

 

井戸with貞子 vs トイレwith花子

↑この構図、めっちゃよく見る。

 

できれば一歩先を、可能なら3歩先を見据えて、本質的な解決を目指してほしいなーと強く思う。

pediatrician-p

View Comments

  • いつもありがとうございます(^^)
    不登校から通信へ転校した息子。  
    色々なことを学び、ありのままをなるべく認め
    息子の人生なんとかなると信じる訓練中です。
    自分と息子を分けて。
    私の人生の幸せに目を向けるようにしてます。
    息子は自動車学校がある時早起きして自分で行く。
    バイトは1日も休まず行く。
    バイクの教習費用も全額自分で払う。
    通信の学費も分割で払います。
    通信の勉強もスローなマイペースでのらりくらりやっています。
    体調も凄く良くなりました。
    死にたいと言って布団にくるまっていた子が
    歩き出しました。
    不登校や引きこもりは
    私達親の成長の良いチャンスだと思っています。
    先生のブログやマルカンのひとりさんのYouTubeやHIKIKOMRIというメルマガがとても私に良い教えをくださいます。
    良かったら皆さんも見てみてください。

  • 子供が、3年半不登校で、必死で勉強して、相談したり、子供に声かけしたり、制限したりしてきましたが、先生のおっしゃる通り、制限を完全にやめて、家族皆で認めて、家を居心地のいい場所にしました。そうすると、今年から勉強を始め、春から中学へ行くようになりました。これで終わりとは思っていませんが、本当に今、どんな姿を見せられてもその少し先を思って、子供を信じる。これしかないと実感しています。

  • いつも納得しながら拝読させていただいています。今回の内容も全くその通り、まさに自分で計画を立てられるように成長することが目標です。そこが目標なのですが、今のままでは全くそのようになるのが想像つきません笑
    どのように関わると自分で計画を立てられるようになりますか?

  • こんばんは😄
    いつも楽しく読ませて頂いてます。ありがとうございます。

    私も3歩先に何を見てやれば良いのかわからず、どうしても過干渉になってしまいます。
    見守るけど、ずっと同じだけど…。の状態になり、焦り、こうしたらいいんじゃない?
    これやってみようよ。と、当たりはソフトだけど、ほぼ強制な口出しをしてしまいます…。具体的にどうやったらいいのでしょうか…。

  • 3歩先とは具体的にどういう意味か分かりません(^_^;)
    てきれば教えて欲しいです。

  • 今、高2の子どもは不登校中。すでに退学しか考えてなく、毎日昼夜逆転のゲーム三昧。最近、「まっ、いいっか」(心は苦しい)と、見守り中。そして、もう学校にはもどらないそうだ。(泣)

    今日、「家族って、いいな。」大和出版の著者hiro
    を読んで号泣しました。特に「落ちこぼれ」について母ちゃんが兄弟2人に話すシーンがよかった💛

    わが子をまるっと認めること。これがとっても大切なんだな。

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