Categories: 発達障害

栄養療法の話 〜小児科医Pの見解〜

コメントで栄養療法の話題が出た。(ありがとうございます)

 

こんにちは。
育児の情報を色々な角度から見ながら勉強しているものです。ADHDは今までその子の特性として考えていましたが藤川先生という精神科の先生が発信している情報でほとんどのADHDの子は必要な栄養を満たしてあげれば治ると言われていました。症例も先生の本にのっており、もしかしたら精神論もあるとは思いますが、単純に栄養不足でそういった特性が出ているだけかもしれないと思い始めました。実際治っている子が多くいるとのことです。ただ、繊細な特性の子や持って生まれたものもあるのかなとは思います。

 

私も興味があり、約2年間ASDとHSC気質のある長男に、偏食がある中で辛うじて好みの味だったプロテインと鉄グミ、ビタミンB郡の栄養剤を用意していて、飲めたり飲めなかったりしている状態です。

実践した感触として、栄養を満たせば特性が落ち着きそうかも…と感じるものの、特性のある子供あるあるなのか胃腸が弱く、すぐにお腹を壊したり、嫌な感じがすると吐き出したりするので、結局は本人の胃腸の弱さを受容してあげて、長期戦で構える姿勢が大切かなと思いました。
ちなみにODの私の妹(成人)にも鉄とプロテインを勧めてみたのですが、胃がもたれて仕事にならないからなかなか飲めないそうです。

栄養を整える事は、子供の成長を支えるのに必要な事だと思うのですが、親が「あなたのためを思って」とか言って強制してしまっては特性が軽減したとしても、子供は生きづらいままになってしまうのではと私は思います。

また支援者の方から栄養不足が原因だなんて言われてしまったら、親も自信をなくすし、偏食や胃腸が弱くてどうしても食べられない子供は自分はポンコツだと考えてしまったりしないか心配です。
簡単に提案できる話ではないと思います。

支援者も当事者も知識として仕入れておくのは良い事ですし、親子が無理なく取り入れられたら良いなと思いますが、結局は「あなたはそう思うのね。」「あなたの胃腸はそう言ってるのね。」と子供を尊重する姿勢が必要だと思います!
あくまでアプローチの1つとして捉えて熱を入れすぎず、やはり親子の関係作りが大切だと思ってます。

 

 

僕はその道の専門家じゃないので、詳しくないんだけど。

でもコメントをいただいたので、僕のスタンスを書いてみる。

 

発達障害は食事で良くなる?

発達特性と食事の関係。

僕も数冊の本を読んだ。

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で。

僕の感想としては、

発達障害が「治る」は言い過ぎだと思う。

でも改善する可能性は大いにある。

って感じ。

 

ご存知ない方のためにざっくり説明すると、ASDとかADHDとかの発達障害、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患、あとは疲れやすいとか、集中力がないとか、キレやすいとか。

子供のそんな「困った行動」を、食事によって改善しようという手法。

 

具体的には、タンパクと鉄を摂る。

糖質を減らす。

あとビタミンとか亜鉛とかも摂る。

って感じで理解しているのだけど、詳しくは専門書をどうぞ。

 

僕の考え

発達障害は生まれ持った性質だと思っている。

アトピーも、体質によるところが大きいと思う。

だから「ある」ものが「ない」ことにはならないと思う。

でも、特性が薄まる可能性は十分にある

 

理屈はこうだ。

 

発達障害の原因について、しっかりと解明されてはいないものの、脳内の伝達物質に異常があると言われている。

脳の中で、情報を伝える物質が、なんかこう、うまく伝わらない状態的な感じ?

 

例えばADHDの治療薬。

これを僕は、「ブレーキを強化する薬」と説明している。

突発的に何かやりたくなったとき、頭の中で「ちょっとまって本当に今コレやっていい?」とブレーキを踏む。

ADHDはここが弱いので、考える前に行動しちゃう。

このブレーキのシグナルをうまく伝えるようにする薬、と。

 

シナプスって知ってます?

脳の中にあるらしい。

脳細胞から脳細胞に情報を届けるときに、ここを通るらしい。

僕も見た事ないんだけど。

 

脳の中の絵です。

情報がやってきました。

 

するとなんか、伝達物質(青いマル)がいっぱい出て、次の細胞に情報が伝わる。

 

でもADHDの人は、うまく情報が伝わらない。

 

具体的には、「ちょっと待ってまず考えて」という情報が伝わらない。

なので、考える前に行動しちゃう。

薬は、ここをうまいことやってくれるというわけ。

(図のクオリティ高くない? 褒めて褒めて!)

 

 

でね。

栄養療法は、この伝達物質の働きを良くする可能性があると思う。

なんか、ドーパミンとかセロトニンとかノルアドレナリンとか?

そういうなんか、脳の中のアレなアレ。(医者のくせによく分かってないなコイツ)

そういったアレの原料であるアミノ酸

栄養療法は、これを補うんじゃなかろうか。

 

タンパク質を分解するとアミノ酸になるんですね。

だから「タンパクを摂れ」は理にかなっていると思う。

 

人間のカラダって原料だけあってもうまく働かないので、調整役であるビタミン類も摂った方がいいよね。

 

も不足すると疲れやすくなるしイライラするし、摂った方がいいね。

お子さんが鉄不足なら親御さんも鉄不足だろうし(同じ食生活だから)、一緒に摂取したら良い。

親子は響き合うから、親御さんが安定するとお子さんも安定すると思うんだ。

 

そういった機序で、栄養不足から発達障害とか精神疾患とかに似た症状が起きている場合、栄養療法の効果は大いに期待できる。

薬を飲むより、まず栄養からの方が副作用もなさそうだし。

実際僕も外来でおすすめするし、効果はありそうな感触。

 

注意していること

でも、物事には必ずプラスの面とマイナスの面があると思っていて。

手放しで「いーじゃんいーじゃん栄養療法超いーじゃん!」とは僕は思っていない。

注意すべき点を3つあげる。

 

めんどい

まず、「やるのめんどい」。

これは大きいと思っていて。

 

栄養を考えた食事って、忙しい令和のご家庭でどこまでできます?

「今日はちゃんとできなかったダメだー」とかご自分を責めそうな親御さんには、僕はおすすめしない。

「必要栄養素を計算して、ビタミン5錠、ミネラル4錠、鉄、亜鉛、カルシウムにDHAに大豆イソフラボンに乳酸菌、あとSAVAS!」とかなっちゃうのも過剰だと思う。

ストイックな人には向かないと思っている。

 

その辺、この分野の専門家の先生はよく分かっていらっしゃるようで、「おやつは冷凍焼き鳥がいい」とか「とにかく肉を焼けばよい」、「冬は鍋がいい」など、手抜き料理テクが紹介されていた。

これだったと思う。↓

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プラセボ効果

次に、プラセボ効果は大きいと思っている。

プラセボとは、効き目があると思い込むことによって本当に体調が良くなる効果。

薬でも、有効成分の入っていない偽薬を「本物の薬です」といって処方すると、症状が改善する患者さんがかなりいる。

 

栄養療法でも同様のことが言えると思う。

つまり、「食事を改善したんだから効果があるはず」と思い込むことで、実際の効果が増強される。

それ自体は別にいいのだけれど、思うように効果が上がらなかったときに、「こんなに頑張ったのになんで⁉︎」となりやすいと思うのだ。

最初は効いたのに、あとから効果が薄くなったときとか。

 

前述したように、発達障害特性が食事で完全に消えることは、僕はないと思っている。

そして食事って親御さんがモロに手間と時間をかけて提供するので、思い入れも強く、期待が大きくなりがち。(だからこそプラセボ効果も大きいのだけれど)

 

感覚過敏やこだわりや性格

最後に、向き不向きは大きいと思う。

例えばコメントでいただいたように、お子さんに味覚過敏やこだわりがある場合。

プロテインを飲めと言っても「やだよ!」。

鉄剤も「やだよ!」。

手間隙かけた栄養満点の料理なんて、「絶対やだよ!!!」。

 

この時、親御さんがどう受け止めるか。

子供の反応にイライラキーキーしちゃったら、本末転倒だ。

 

あなたのためにこんなに頑張ったのに!

とにかく食べなさい!

 

とか、逆効果な気しかしない。

適度にゆるく捉えて、適度にゆるく続けられる方に向いているやり方だと思う。

 

まとめ

ってことで。

チマタで話題の栄養療法。

僕は、使い方次第だが有用な方法だと思う

 

実際の診療でも、僕は結構おすすめしている。

環境調整がしっかり出来て、「加えてできることはありませんか?」ってときとか。

投薬に抵抗がある親御さんに、まず食事から試してもらうとか。

栄養なので、副作用もまず心配ないだろう。(極端なことをしなければ)

 

ちなみに僕自身も、上記の本に感化され、おやつはお菓子じゃなくてゆで卵を買うようにした。

体調が良くなったかは不明だが、体重は2kg落ちたので嬉しい。

pediatrician-p

View Comments

  • いま高1の息子は中学生になって疲れやすくなり、やたらよく眠り、目眩もたびたび。中3になり朝起きれなくなり、起立性調節障害と診断され、その後カンピロバクターに髄膜炎を併発し死にかけました(>_<)

    回復してから徐々に藤川理論を実践して1年余り経ちます。
    ODの息子はやはり胃腸が弱いので、とくに腸内環境には気を配りながら、また体にも心にも無理強いしないよう試行錯誤しながら続け、最近では朝は問題なく起きれますし、目眩はほとんどなくなりました。
    時間の経過や受験ストレスからの解放、あと積極的に運動していたこともあると思いますが、機嫌のいい日が増え、明らかに元気になりました。
    実感としてはタンパク質+鉄ビタミンの栄養療法、腸内環境の改善、運動、規則正しい生活、ストレスの解消が大事だと思います。

    P先生、おやつにゆで卵、いいですね☆!!

  • 先生の見解を書いていただきありがとうございます。図もとっても分かりやすいです!褒めますw
    つい最近本で知ったばかりで、とりあえず肉!肉を多く!と、初歩中の初歩の段階です。ストイックになってイライラしたら終わりだ、くらいのつもりで始めてます。根が真面目なので逆に気を付けないといけなくて(笑
    栄養と、年齢を重ねることによる本人の成長、療育などが、生きづらさの軽減に繋がっていきますように。

  • 我が家も昨年夏より藤川先生の本、ブログを読み実践しております。

    息子(小3)はADHDと診断され、栄養療法をはじめるまでは学校での立ち歩き、暴言・暴力、つば吐きなどがあり、病院や学校からは投薬を勧められていました。
    投薬によって本人が落ち着き周りとのトラブルが減るのであればと私は前向きに検討していましたが、父親が副作用を心配し反対だったため、他の方法を模索している時に栄養療法に出会いました。

    ジュースやお菓子を減らし、高たんぱくの食事、プロテイン、サプリ(ビタミンC・鉄・ナイアシンアミド)を続けています。
    プロテインやサプリを嫌がる時もありますが、無理強いはしないようにしています。

    結果、1カ月ほどで立ち歩き・つば吐き・暴力がなくなりました。
    自分の思いが通らないとすぐに怒って気持ちの切り替えが難しかったのが、今では怒ることはあってもすぐに落ち着き、気持ちに折り合いをつけることができるようになっています。
    ゲームをはじめると他に何もできなかったのが、約束の時間にゲームを切り上げ自ら宿題をしています。白紙のテストが無くなりました。学校からの呼び出しも無くなりました。

    娘(中3)は起立性調節障害と診断されていますが、プロテインと鉄で頭痛が減っています。
    私自身も実践していますが、イライラが減り子どもと向き合う余裕が出てきたと思います。
    「親子は響きあう」・・・を実感しています。

    P先生がおっしゃる通り、特性がなくなるわけではないのかもしれませんが、選択肢のひとつとして検討されることをお勧めします。

    長文失礼いたしました。

  • 息子がASDで産まれながらの癇癪、多動がありました。内服を小1から小6までしましたが、イライラが抑えられなくなり不登校に。副作用の眼瞼痙攣が出て内服出来なくなり、栄養療法開始。イライラが全く無くなり、眼瞼痙攣消失、アレルギーも改善、学校にも行けるようになりました。私も一緒にやってメンタル改善しました。栄養療法は専門の病院が全国にあり、採血をして、データに基づいて足りない栄養素を補う、タンパク質主体にする、糖質減らす、をします。医療用サプリは質も良く改善早いです。もちろん、本人の意思を尊重して。効果はかなりあると思います!副作用無いし、根本治療なのでオススメです!

  • 2年程続けているとコメントしたものです。
    わかりやすい内容で、今後迷走したときに読み返したい良記事です!

    2年間、情報収集を続けていると、一部の方がアンチ医療になり、極端な発言をされるのを目にします…栄養で病気はなんでも治る!みたいな…
    最近だとコロナは茶番みたいなのとか…

    まぁ思想は自由だし、色んな人がいるなーくらいの感想だったのですが、最近の事件から実はこれって極端な発言をさせて周囲から浮かせて、教祖への依存心を高めるマインドコントールにもなるそうです。
    子育てに悩む親御さんはカモとして狙われやすいようなので、ネットからの情報収集は特に気をつけないといけないと思ってます。

    このブログを読んでいる方は、本当にお子さんの事を心配して子供のためにできる事を模索してやってきていると思います。
    栄養療法をきっかけに、所謂トンデモに足を踏み入れて、お子さんを見失うような事がないように、ちょっと慎重派な意見をコメントしました。

    でも自分も一緒にやってみて、イライラしてから怒るまでの時間に余裕ができたので、きっと本当に怒る事なのか考えられるシナプスになったのかな?なんて思いました!

  • 栄養療法を取り上げていただき、とても嬉しいです。ASD &ADHDの息子と私自身に実践しています。もうすぐ2年目です

    息子は知的障害があり、癇癪が酷く育てるのが本当に大変でしたが、栄養療法を始めてからは情緒が安定し、言葉でやり取り出来る様になりました。多動も落ち着きました

    我が家の場合、療育では効果を感じられなかったので栄養療法にすがりましたが、効果は実感しています。偏食の我が子にプロテインやビタミンを飲ませるのは大変でしたが、ラムネのような食べやすい物、飲みやすい味を探して彷徨った結果です。不味いサプリは私が飲んで消費しています。マグネシウムの入浴剤も、経皮吸収されると聞いて始めました

    療育では効果を感じられない人にオススメします。但し、子供の偏食を乗り越えて適量にたどり着くまでがしんどいかもしれません。

    誰も治してくれないなら、親がなんとかしてやりたい。これからも頑張ります。

  • 体を作るのが栄養素なので、食事が・・・
    って考え方は当然の事で、動物が専門の立場から言うと、ペットの寿命が延びてるのも良質なペットフードが増えたのも1つの要因。
    そしてペットの認知症が増えた理由に高齢化に加え栄養素(不飽和脂肪酸)の関係も考えられてます。
    魚→肉の食生活にペットも変化してるから。

    身体の病気も精神の病気も栄養素が関係していて不思議はありませんね。

    健康を突き詰める人だと、身体の大分は水だからと、水に拘る人もいますしね。

    だけど、食費や嗜好の問題もあるので、無理のない程度(ストレスの影響がない程度)ってのが前提にありますね。

    無理のない範囲なら、何を取り入れても問題ないと思います。

    何に対しても否定も肯定もせず、可能なものは取り入れてみる。ってスタンスで良いと思う。

  • 図、見やすいです。

    イライラしてる人に牛乳飲めとか、バナナ食べたらお通じも良くなって丸くなったとか。

    幼い頃は大豆系大好き、今は肉魚大好きで、高タンパク寄り、野菜も大好き。
    フルーツは、酸っぱいのが過敏でダメなので、最近は買いもしません。

    ほんとに嫌がるものは切り捨て。
    雰囲気で嫌がるだけなら、あの手この手、騙し騙し。

    個人的には、栄養バランスが悪いからとか、妊娠中の何かが、たとえば妊娠糖尿病とか、そういう理由で発達障害につながるとかの話題は、親的にネガティブになりがちなので、そういう話題はスルーしてます。
    けど、栄養は、無理しない範囲で気をつけようと思いました。

    毎回、いろんな気付きがもらえるので、個人的には、このブログ、大好きです。

  • まさしく高タンパク&バランスの良い食事の良さを今実感しています。偏食の子供には中々難しい面もありますが、、、自分自身はかなり元気になりましたし思考がクリアになりました。
    食事が全てではありませんが、食事も大切ですね。

  • 今回の食事のお話とても興味深かく読ませていただきました。正直、栄養の問題ならとっくに薬が開発されているのではないかと思って、うさんくさく思っていました。先生がかなり肯定的だったので気持ちが変わりました。本くらいよんでみようかな。
    しかし私自身が料理が苦手で好きでもないので自分の首を絞めることになりそうです。ゆるく考えてゆるく実行してみたいです

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