Categories: 心理学

甘やかすからつけあがる?

3歳男児です。

 

スーパーに買い物に行くと、ひっくり返って泣いて駄々をこねます。

ママ友に聞いたら、あなたが優しいから泣けばいうことをきくと思っているのよ、と。

ダメなものは断固としてダメ、泣いたら強制的に帰宅する。

ここまでやれば、次からは泣かないわよって。

でもそんなことをしたら、もっと泣いて手がつけられなくなるのに……。

私は甘いのでしょうか。

こんな時、どうしたらいいですか?

親が甘いからわがままな子に育ったのか、という疑問。

 

これにはハッキリNoと言いたい。

逆だ。

こういう子だから親が接し方を変えたのだ。

 

 

引っ張って連れて帰って、それであきらめる子であれば、きっとこのお母さんもそうしている。

でもそうはならないと経験的に分かっているのだ。

 

 

この子は、こだわりが強い。

1〜2歳頃は、自動販売機の前を通るたびに泣いて困ったそうだ。

1台1台全部こだわるので、毎回ジュースを買うわけにもいかず、途方に暮れたと。

ほとんど外出もできなかったという。

この子を引っ張って帰宅させたら、ひどいかんしゃくを起こして手がつけられなくなるだろう。

こういう子だからこそ、無理やりはよくない。

このお母さんは、泣き止むまで30分でも1時間でも待って(店員さんごめんなさいと念じながら)、泣き止んだら別の話題で気を引いてなんとか買い物を終えるという。

でも毎回なので、さすがにしんどいと相談に来たわけだ。

 

 

本当に大変ですねと頭が下がる思いだ。

こだわりが強く、かんしゃくを起こす子だ。

これは仕方ない。

 

育て方の問題では、断じてない。

だから接し方を変えても、性質はすぐには変わらない。

僕がアドバイスするとしたら、できる限り買い物には連れて行かないことだ。

 

 

お父さんと一緒に留守番していてもらう。

難しい場合は祖父母に頼んだり、

ネットスーパーを使ったり。

事情を話して保育園のお迎えを買い物後にさせてもらうのはどうか(普通はお迎え前の買い物は禁止だろう)。

 

とにかく、連れて行く回数を可能な限り減らす。

生活するのにどうしても必要なこと(家庭による。着替えや歯磨きを嫌がる、切り替えができず時間通りに外出できない など)は、

「コレの次はコレをする」「何時になったら○○する」とルーチン化してしまう。

買い物の例でいうと、「スーパーでは手を繋ぐ、商品は触らない、決めたものしか買わない、袋詰めを手伝ってすぐ帰る」とか。

 

コツは例外を作らないこと。

「今日は特別」は子供が混乱する。

決めた通りに毎回実行する。

2〜3回やっても定着しない。

50回やると覚えるでしょうと話している。

 

それまでは毎回、かんしゃくに付き合うことになる。

しんどい。

 

 

だから、できる限りこだわりは優先してあげてほしい。

できるだけ叶えてあげて、かんしゃくを起こす必要をなくしてほしい。

彼の自己肯定感を下げないためにも、付き合えるこだわりには付き合ってほしい。

どうしてもの部分だけ、最低限のルールを決めるにとどめる。

 

 

 

で、冒頭の話。

甘いからわがままなのか、わがままだから甘くなるのか。

 

 

今回は自閉スペクトラムの子を例に出したが、他のタイプでも同様だ。

HSCは「親が過保護だから引っ込み思案」「やらせてみないとできるようにならない」「(匂いや味に過敏で)わがままだ」などと言われるだろう。

ADHDは「しつけがなっていないから走り回る」。

起立性調節障害は「親が舐められているから起きない」。

といった感じか。

 

 

断じて違う。

『そういう子』だから親が対応したにすぎない。

そしてその子には、その接し方で合っている。

それまでの育児の経験から、その接し方を選んだのでしょう?

親御さんは自信を持ってほしい。

 

 

「人とは違う子どもを育てるなら、

      人とは違う親にならなければなりません」

(エレイン・N・アーロン)

 

 

The Highly Sensitive Child、HSCの概念を提唱した先生の言葉。

これにつきると思う。

 

 

子供に特性があるのなら、その子に合った親にならなければいけない。

親御さんはその覚悟を持って子育てをされていることと思う。

『普通の親』ではうまくいかない。

外野に何と言われようと、動じる必要はない。

人とは違う子の、人とは違う親なのだから。

それでよい。

自信を持ってほしい。

pediatrician-p

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  • 周囲からどんな目で見られても、母親なのにダメだなとバカにされても、我が子からの「お母さん大好き」と言う言葉で頑張れます。
    そう思えるまで時間はかかりましたが、覚悟が出来てきます。
    自分達なりの人生、成長で良いんだと子供から教えられています。

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