思春期の女子。
父親を嫌うことはよくある。
むしろそれが普通だと思う。
んだけど。
普通と思うあまり、「ハイハイそうねそうね」で流しちゃっていないでしょうか?
ちょっとだけ手を止めて、話を聞いてあげてもいいかもしれません。
大声で怒鳴るし、物にあたるし、クチャクチャ食べるし!
まぁ、ハイハイ思春期のアレねって感じの主張ですよね。
案の定お母さんもこんな感じ。
まぁ思春期なので仕方ないです。
ここまでならよくある話。
でも。
僕はその様子をみてピンときた。
もう少し突っ込んで聞いてみる。
お父さんのそういうところ、いつから嫌だった?
小さい頃から。
お父さんに言った?
でも、もともと声が大きいんだから仕方ないだろ! って。
お母さんも、お父さんは悪気があるわけじゃないからって言うんです。
あなたが我慢すれば済む話でしょうって。
悪気がないのは分かるけど、でも……。
ビンゴだ。
この子は、ガチでいやなのだ。
ずっとずっと嫌だった。
でも、親は聞いてくれない。
「あなたが我慢しなさい」で流されてしまう。
思春期になり、自己主張できる年齢になった。
もう一度言ってみる。
「お父さんがしんどい!」
でも、この有様……。
そう、この子はHSC。
人一倍敏感なタイプ。
家族が出す雑音、騒音に、この子は耐えられない。
マジでいや。
ガチでいや。
でも、この気持ちは分かってもらえない……。
半ばあきらめている。
私が我慢すればいいんだ。
お父さんは悪気がないんだから、あんまり言ったら傷つくかもしれない。
でも、イライライライライライライライラ……。
お父さんが嫌い!
でも解決の手立てなし。
イライライライライライライライラ……。
結構います。
お父さんが嫌いで、でも解決手段が見つからなくて、袋小路に入っちゃってる思春期女子。
お父さんの肩を持つ、わからんちんのお母さんも嫌い。
(本来なら愛すべき対象である)お父さんが嫌いな、自分のことも大嫌い。
こんな子はたいてい、学校でもストレスを溜めている。
たいてい過剰適応、いい子すぎ。
で、家でもストレスをためる。
ちっとも休まらない。
どうなると思います?
爆発する?
それができる子はまだ良い。
大爆発、大暴れして「ウルセーんだよクソオヤジ!」とかブチ切れられる子は、まだマシだと思う。
違うんですよ。
こんな子は大抵キレられない。
我慢する
↓
我慢できない
↓
でも我慢する
↓
でも我慢できない
↓
でもでも……
こんな感じ。
修行僧みたい。
解脱するんか? って感じ。
とことん我慢し、我慢の限界を越えて我慢し、スーパーサイヤ人みたくなっていく。
それでも尚キレられない。
するとどうなると思います?
怒りエネルギーの矛先が『自分』に向くのだ。
具体的には、体調を崩す。
頭痛、腹痛、朝起きられない……。
結構な割合で不登校に突入し、家庭で過ごす時間が増え、さらに父に対してイライラ。
コロナで父の在宅時間が増えており、またイライラ。
体調不良や不登校は、多分この子の優しさだ。
ブチ切れて父を傷つけるより、自分を傷つけることを選んだ。
腹痛や頭痛と向き合っているときは、父に対するイライラは薄れる。
「父を憎んでいる自分」と向き合うくらいなら、「腹痛に困っている自分」と向き合う方が、ずっと楽だ。
なんて優しいいい子なんでしょう!
子供が言うことは、その子にとっては真実なんです。
大人からみると「ハイハイわろすわろす」でも、その子は真剣です。
子供(たとえ幼児でも)が「お父さんの大声が嫌!」とか言ったら、この子は今本当にそう思っていると考えてもらうほうが安全だろう。
思春期の、判断力のある年齢の子なら特に。
親御さんにとっては最近急に始まったことかもしれない。
晴天の霹靂だろう。
でも、その子は苦しんで苦しんでやっとの思いで口に出した。
こういうことは他の場面でもよくあって。
反抗期、不登校、いじめとか、まぁなんでも。
子供の気持ちは、子供に聞くしかない。
親御さんとは別の人なので、本人に聞くしか知る手段はないのだ。
逆に言うと、子供の発言は軽視しない方がよい。
大人からするとどんな子供じみた発言でも、その子は本気だ。
そりゃそうだ、子供なんだから、子供じみた発言をするのが普通。
年頃の娘さんがそんなことを言ったら、お母さんはたしなめてしまうでしょう。
そんなこと言わないの、って。
でも、具体的にどこが嫌いなのか、どの程度嫌いなのか、確認してみても良いかもしれません。
そんなことを聞きがてら、母子でおいしいスイーツでも食べに行くと、娘さんの態度が軟化するかもしれませんししないかもしれませんし僕もおいしいスイーツ食べたい。
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いつも興味深く読ませて頂いています。
今年も心の拠り所となるお話を楽しみにしています。
うちのHSC息子(小5、絶賛不登校中)は「お父さん嫌い」とすら言葉にできません。
明らかに父親に対する過剰適応があり、夫が休みだといい子になろうと振る舞っています。爆発するどころか、嫌ってはいけないと思っていると思います。いっそ父親が嫌いと自分の気持ちを認めてしまった方が楽になるのでは?と思います。
そんな子なので、家で好きなことをしていても、私がいくら寄り添っても、エネルギーが貯まっていかないんです。夫も病院で話を聞き、頭ではわかっています。でも、べき思考が強く、そう簡単には変われないようです。
最近、過剰適応によるストレスから、自傷行為もあって困っています。自傷と言っても爪噛みと自分の腕を噛むことなので、命に関わるわけではありませんが。腕はしばらく痣が残るくらい噛んでしまっているようです。これ、どのように対応するのが良いのでしょうか。病院では、母親が保護的でいれば道を外すことはないと言われています。私は子どもの絶対的な味方ですが、そんな息子を見ていると苦しいです。
P先生
今年も沢山の役に立つお話、ありがとうございました。
私あるある、大人&子供からのしんどい系会話を受け流すという傾向を、がっつり気づかせて頂きました。
自分が子供の頃に、辛かったり悲しい気持ちを両親に言えずにいた事が原因かと思いを馳せました。
気付けて、過去の自分に優しくしたい気持ちです。
2021年、優しP先生に沢山の幸せがありますように!
ああ、そうだったのか…と何度もわかるわかると頷きながら読みました。私の父は酒癖も悪くギャンブルもするし、平気で手も挙げる父でしたので、それで嫌いなんだと思ってましたが、違いました。
思春期よりもっと以前に、話すのも苦手で、一緒に出掛けるなんてなったら一日中ストレスでした。周りの子供がパパ~と呼んでるのを見て「私は父親のことを好きに思えない、薄情な子供なんだ。だから可愛がって貰えないんだ…」と自分を責め続けてました。実母も毒親でしたので、庇ってくれるのは祖父母だけでしたが、祖母も母も私に悪口をお互いに話してくるので、家族がしんどかったです。(HSPの人は毒親育ちが多いと言う方もいますが、関連性あるんでしょうか?)しかしながら、生きていくのに、住むところが必要なので、いい子の振りして過ごしてきました。…が!この年(30代後半)になり、とある出来事があり、ようやく親から離脱出来ました。ようやく呼吸が出来ると感じるくらいの生きている感です。家族であってもわかり合えないこともあるし、入り込んではいけない距離感はあると思います。