起立性調節障害。
朝起きられない病気。
なんだけど、その問題の大半はメンタル的な部分だったりする。
起立性調節障害は、立ちくらみ、めまい、動機、だるさ、頭痛……といった「なんともいえない症状」を呈する疾患。
この病気、外から見るとなんとも分かりづらい。
『骨が折れてる』とか『熱が出てる』とか、一見して明らかな病態ではないのだ。
「本人が辛いと言っているんだからきっと辛いのだろう」と思うしかない。
辛くて動けず、遅刻や欠席、不登校に繋がることも多い。
お母さん、信じてるよ。
かと思えば夜になると元気で、ノリノリでダンスを踊ったり、夜更かししてスマホをいじっていたりする。
そんな様子から「なまけ」とか「さぼり」とか「うらみ」とか「つらみ」とか「ねたみ」とか「そねみ」とか「ひがみ」とか言われてしまう。(途中から肉体関係part2)
起立性調節障害は、その大部分がメンタル的な要素を含む。
純粋な身体疾患としての起立性調節障害は、非常に稀。
たまに遭遇すると、火星で火星人に会ったときくらいビックリする。
火星に行ったことないけど。
基本的に、心配事や嫌なことがあると、自律神経のバランスを崩し、体調が悪化する。
体調が悪い
↓
学校を休みがちに
↓
気まずいし不安だし
↓
さらに体調が悪くなる
↓
さらにお休みが増える
こんな感じ。
たいていの患者さんで、体調が悪いからお休みが増えるのか、はたまたお休みが嵩むせいで体調が悪くなっているのか、わけわからん状態になっている。
ぐっちゃぐちゃになっているんだけど、大元を辿ると「学校に行きたくない」のだ。
これはもう、絶対そうだ。
学校に行きたいなら、少々の体調不良など押して登校する。
行ってしまえばそれなりに体が動くことが多いし。
でも、行かない。
特に体調が良くなった午後からの登校を渋るようなら、もう絶対そう。
行きたきゃ行くはずだ。
そんなことを言うなら確定だ。
遅刻が嫌なんじゃない、学校自体がいやなのだ。
で。
これは無意識だ。
本人は「あたしゃ学校に行きたいんだよ!」と思っている。
驚くことに、本気でそう思ってる。
「学校に行きたいけど、体調が悪いせいで行けない」
ガチでそう思っているのだ。
なぜこんなことが起こるかというと、
この二者の区別がついていないんですね。
本当は学校に「行きたくない」、でも学校は「行くべき」。
この区別がつかない。
本当は行きたい(はず)、でも行けない自分。
この矛盾に悩む。
なぜ行けないの?
そうか、身体がダルいんだ!
物心ついてたかが数年の子供に、自分の気持ちなど自覚できない。
それより慣れ親しんだ身体の方が手近でわかりやすい。
「だるい」「おなかいたい」「あたまいたい」
そんな気がしてくる。
そっかそっか、私は学校に行きたいんだけど、だるくて朝起きられないから行けないのね本当は学校に行きたいんだけど。
そう考えると合点がいく。
そのようにして「学校には行きたい」「でもダルくて……」となっていく。
とりあえずこれで納得した。
体調不良のせいで登校できない
なので、この説をひっぺがされると非常に困る。
体調が良くなったら学校に行かなきゃいけない。
でも、行けない。
私は絶対に病気でいたい!!!
これを『疾病利得』という。
病気でいることが本人の利益となる。
この場合だと、学校に行かなくて良い。
治っちゃ困るわけだ。
もともとの根っこは「学校に行きたくない」という気持ち。
これを自覚できないことで、起立性調節障害の症状が悪化していく。
『真面目ないい子』に非常に多い。
自分が学校に行きたくないと思っているなんて、受け入れられないのだ。
学校は行くべき場所だし、当然自分も行きたいと思っている。
そう思い込もうとする。
そして、そんな絶対的な場所に実際には行けていない自分。
まぁ責めますわ。
自分で自分を責めまくる。
責めて責めて責めまくって。
飲んで飲んで飲まれて飲んで。(酒と泪と男と女)
当然、心身のバランスを崩す。
受け入れれば楽になるのに。
「あたしゃ学校がキライなんだわやってられねーわ」
そう思えると、起立性調節障害の症状は一気に軽くなる。
実際僕の外来でも、その気持ちを認めた途端に症状がほぼ消失した子は少なくない。
でも。
でも、ですよ。
これを周囲が言っても絶対に受け取らない。
起立性調節障害の患者さんは、真面目ないい子が非常に多い。
「ま、いっか」「親がそう言ってくれてラッキー⭐︎」とか思える子は、こうはならないのだと思う。
頑張り屋だ。
頑張りすぎてしまうのだ。
だから、病気を隠れ蓑にしてまずはゆっくり休むことをおすすめしている。
医者である僕から言う。
「あなたは起立性調節障害という病気だから身体がダルいんですね。
怠けとかサボりじゃないです。」
すると、安心した顔を見せることが多い。
そっか、私は病気なんだ。
私が悪いわけじゃないんだ。
真面目ないい子だ。
あなたは悪くないと言われると、心底ほっとする。
まずはそこからスタートするのが良いと思う。
自分を責めずに済むようにしてやる。
すると、症状が少し和らぐ。
ゆっくり考えられるようになる。
「実際、どのくらいの頻度なら学校に通えそうかな?」
真面目ないい子だ。
自分を責める気持ちさえ手放せば、勝手に前を向くはずだ。
View Comments
真面目ないい子、確かにそうかもしれませんね。
そんな真面目でいい子が、今の自分を受け入れ前に進めるようになったけど、また立ち止まってしまった時、親として具体的に出来ることってありますか?
前の出来る自分と今のできない自分を比較して落ち込み、受験勉強をやる気がない状態で、何か声をかけてあげたいけど、自分で乗り越えるしかないとも思い、辛いね〜と共感することくらいしか出来ません。
いつもブログ楽しみに拝見しております。とても私達母娘にとってタイムリーなブログでした。中2女の子五月雨登校、真っ只中。今日、総合病院でありとあらゆる検査をして先生から、あなたはとても健康で起立性調節障害なんかではありません。ここでは何も治療する事ないのでメンタルクリニックなどを考えてと言われ、娘は病気を否定されその場で泣いてしまいました。学校に行かないでもいいと言っても進学が・・・将来が・・・と言う娘。まさしくこの心理なんでしょうね。
疾病利得なんて言葉があるんですね〜!
いつもブログを楽しみにしてます。
中学不登校後高校に進学した娘が、強迫性障害です。治療を拒否してるので診断はありませんが、確かにその症状。
治療を拒否ってわけわからないって思ってたけど、今回は起立性のことで書いてあるけど、娘もそういうことなのかなと思いました。