子供の発達が気になる。
そんなとき、お子さん本人に伝えますか?
しばしば聞かれる。
ケースバイケースだが、僕は基本的にはこう考えている。
伝えた方がよい。
ただし、その先を見据えて。
子供の特性を本人に伝えるメリットって何?
特に美点じゃなくて、欠点の場合。
困ったことがあるから受診したわけで、見えてくる特性って大体悪い点なんだけど、それでも伝えるべき?
欠点を伝えるメリット。
それは「本人が自分の特性を理解していた方が、その後の人生やりやすいから」。
自分の持ってるカードって何?
逆に持ってないカードは?
子供は人生経験が浅いので、自分を客観視することが難しい。
自分(と親)の感覚が世界のスタンダードだと思ってしまいがち。
でもそれだと困ったことが出てくるわけで。
すでに困ったことに直面している場合。
例えば、
このような困りごとを本人が自覚している場合。
理由はわかんないけど、「うまくできない」「しんどい」「なんでみんなは……」という自覚がある場合。
教えてあげてほしいと思う。
だって、他の人はそうじゃないんだ。
その子の特性がそうなのであって、他の人はそうじゃないことが多い。
それを教えてあげることで、「みんなは気にしてないんだ」「自分が悪いんじゃないんだ」「努力不足ってわけじゃないんだ」と知ることができる。
すぐには納得できなくても、「知識として」仕入れることはできる。
これが大事だと思う。
もちろん、デメリットもある。
「レッテル貼り」だ。
子供の頃、親に言われたことって『呪い』のように残り続けることがある。
ブスだブスだって言われて育ったら、「自分はブスだからわきまえて、目立たないようにしなくちゃ」とか。
暗記が苦手だと言われたら、「自分は暗記が苦手だから物事を覚えておくのはムリ」と自分にフタをしてしまうとか。
ASDと言われたら「自分は発達障害だ。だからダメなんだ」と思うかもしれない。
特定の何か(片付け、書字、絵、発表、細かい作業、運動など)が苦手と言われたら、「〇〇はムリ!」と以降の挑戦を諦めてしまうかもしれない。
子供は成長する。
それが子供の子供たるゆえんで、素晴らしい部分だ。
でもレッテルを貼ることで、その成長を止めてしまうかもしれない。
ある地点では〇〇は苦手だったけれど、本来なら成長とともに克服できたかもしれないのだ。
ということで、伝えるメリットとでメリットを天秤にかけ、「あえて伝えない」という選択肢を選ぶことも全然アリだ。アリ寄りのアリ。
実際、伝えるべきじゃない子っていると思う。
例えば
こんなときは「あえて伝えない」のがいいと思う。
本人が困ってないのに伝えても、大きなお世話だろう。
特に困ってないのに「キミのこんなところがダメ」とか言われたら、大人でもハァ⁉︎って思うし。
ASDタイプや知的にゆっくりな子は、そもそも困っていないことも多い。
ADHDタイプも、その時は困っても1分後には忘れてたり。
伝えるからにはやっぱり「本人が困っている」という前提が必要だ。
これは、時期が早いってこと。
なんか困ってる。
その自覚は本人にもある。
でも、パニックになっていて何も耳に入らないとか。
年齢的に、他人と自分の境界がまだよく分かっていないとか。
今伝えても変な風に伝わりそうな感じなら、ちゃんと受け入れられる時期まで待ったほうがよいと思う。
例えば知的にゆっくりな子。
知的な問題で勉強を頑張ってもなかなか難しいですと言われても、「じゃあほどほどでいいや」とか「偏差値の低い学校を探そう」とかに繋がらない。
「知的にゆっくり」、それはそれとして、でも勉強は頑張ってしまい案の定結果が出ずに傷つく。
「知的にゆっくり」と「勉強に工夫が必要」が結びつかないのだ。
例えばASDの子。
ASDだから対人トラブルが起こりやすいと言われても、じゃあどうすればいいのか見当もつかない。
「気を使って話す」とか、具体的にどういうこと?
何が不快に思われているか分かってなければ、じゃあどうすればいいのか分かるはずがない。
子供の特性は、基本的には本人に伝えた方がいいと、僕は思っている。
伝えた方がよい。
ただし、その先を見据えて。
伝えてどうするのか。
どう活かすか。
子供が自分で扱いきれる情報なのか。
『呪い』になって一生ついてまわらないか。
情報を受け止められる状態なのか、お子さんをよく観察してほしい。
そして伝えるなら「その先」を、まずは大人が考えてからにしてほしい。
だからこういうふうに考えようとか、こんな方法を試してみようとか。
子供って思ったよりたくましいので、マイナスの情報でもしっかり咀嚼して自分のものにしていくと僕は信じている。
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こんにちは。
この前高校三年生の長女がHSCだと、先生のブログで確信しました。
本人も周りも困っていました。
長女にそーではないかと思うと話し
先生のHSCの世界という記事を長女に
読ませ、行きづらさもあるけど
こんなに素晴らしい感性を持ってる子
なんだって!と言うと、思ったより
受け入れてくれました。
まだ、完全には受け入れきれてないけど
そっか、だから、こーおもってたのか
こんなに辛かったのかと思う事も多いようです。
ここからが、本人も支える家族も
学びながらだと思いますので
先生のブログ参考に、毎日頼りにしてます!
ありがとうございます。
確かにどこまで何を伝えるかは悩ましいところではありますね。
自閉症スペクトラム障害の次男がいま診察やSTに通ってるのは、少し吃音があったり発声がしにくくコミュニケーションが取りにくいところがあって本人も困っているので、本人には「おくちの練習」ということで通ってます。
次男も前向きに通っているからか、会話していても「さ行」が随分聞き取りやすくなりました。
自分の意見や気持ちが伝えるのが苦手なのでSTとのトレーニングの時に「わからないところはわからないって言ってね」と声掛けして貰ったり、持たせてる「気持ちカード」を使って「わからない」とか「もういっかい言ってほしい」とか気持ちを伝えたりとかのコミュニケーションのトレーニングもお願いしています。
「空気が読めない」はもう少し大きくなってからかなぁ。
やはり成長と本人の困り度を見て伝えて行かないといけませんね。