Categories: 親子関係

自分で動くしかない 〜親のコントロールの範囲外〜

不登校とか反抗期とかゲーム依存とか、そういった子供の困った状況。

勉強しないとか生活態度とか嘘をつくとか約束を守らないとか、そんなのもそう。

 

「こんな接し方をすると成功率が高いですよ」という、診察室から見た情報を発信している。

でも、みんながみんなセオリー通りに動くわけじゃないんだ。当たり前だけど。

数年間の経過をみてきて

僕はこの分野に足を突っ込んで5年くらいになるのだけど。

5年もたつと外来通院を『卒業』する子も結構出てくる。

不登校だった過去僕はこの分野の診療を始めて5年ほどになる。 社会復帰を果たした不登校経験者も結構出てきているんだけど。 みんなあの頃が嘘みた...

 

うまく社会復帰できると、僕もすごく嬉しい。

すごく成長したなーと実感するし、頼もしいと思う。

 

そしてこれは、本人の頑張りによるところがすごく大きい。

もちろん親御さんの接し方とか考え方も良かったんだけど、でも一番は本人だ。

本人が悩んで、本人が決めて、本人が歩き出した道だ。

大人はその手助けをすることしかできないと、社会復帰した彼らを見て痛感する。

周囲には応援しかできない。

 

親の接し方

親の接し方のコツって絶対にある。

接し方についてはたくさんの記事を書いてきたけど、やっぱり「その子をそのまま受容すること」だと思う。

家を快適にして、本人を信頼して、話を聞いてあげること。

 

 

なんだけど、その通りにしても子供がうまく動き出さないケースもある。

反対に、接し方はまずくても本人が自力で動き出すケースもある。

(もちろん上手に接した方が成功率がずっと高い。だからこそおすすめしている。受容せずに子供が勝手に動き出しても、その後の生きづらさにつながることが多いし。)

 

親にできるのは、子供の人生の「応援」のみ。

 

「全力で応援するよ」

「あなたのことを信じてるよ」

 

そんなメッセージを送ることはできる。

 

「思っていること、なんでも話してね」

「失敗したらいつでも帰っておいで」

 

そんなふうに、子供を受け入れる準備を整えることもできる。

 

でもどうするかは、子供次第。

 

全然届かないかもしれない。

受け入れないかもしれない。

どんなに激励しても、ちっとも響かないかもしれない。

 

実際にどう行動するかの決定権は、子供が持つ。

 

コントロールできない

なんでこんなことを言うかって。

外来を「卒業」した子たちをみて、やっぱり親が子供をコントロールするなんて無理だと実感したから。

 

すごく上手な接し方をした2組の親子がいた。

  • 片方は動き出し、社会復帰した。
  • もう片方は動き出さず、人生のお休み期間を継続中。

 

この2組の違いって何?

 

親の接し方じゃない。

どちらも接し方は上手だった。

違いは、子供の特性や性格、考え方、環境、タイミング、その他もろもろ。

親の手の届く範囲外のことだ。

 

 

動き出した子は、自分で決めたのだ。

そう強く実感する。

実際に動いた子の晴々した、でもちょっと不安そうな笑顔をみて、強くそう思う。

この子は、自分で決めたのだ。

親にコントロールできる領域ではない。

 

「まだ動かない子」を持つ親御さんへ

これを読んでいるのは、「まだ動かない子」に悩む親御さんが多いと思う。

まず、お子さんはそのうち必ず動き出す。

大丈夫。待っていて良い。

 

でも、それが「いつ」かは分からない。

 

こんなに尽くしたのに!

 

この子のために、こんなにやったのに!

 

気持ちはすごくわかる。

でも、見返りを求めないでほしい。

こう接したからこう動くはず、といった性質の話ではないのだ。

 

動くかどうかは、子供が決める。

 

そこに親は介入できない。

コントロールできる問題じゃないんだ。

 

 

気持ちはわかる。

 

この子のために良いと思われること、あれもやったしこれもやった。

あと何が足りないの⁉︎

 

わかる。

 

〇〇ちゃんはこれをやったら動き出したらしい。

うちの子はなぜダメなの?

 

それもわかる。

でも、親の努力と結果が比例するとは全く限らないんだ。

そう、前もって知っておいてほしいと思った。

 

 

コントロールできない。

待つしかない。

でも、決めるときには決めます。それは絶対。

腹を括って待っていていただきたいと、『卒業』した先輩たちの笑顔をみて思った。

pediatrician-p

View Comments

  • いつも、ありがとうございます。
    先生は、第一に子供の味方、第二に母親の味方だと感じます。
    9月から不登校6年目になりますが、先生のお話、とても良くわかります!今月ようやく自主的に通信制高校などのパンフレットを震える手で読んでいた息子。想像できないほどの緊張感や恐怖心に対して、勇気を出して立ち向かう姿でした。石橋を叩いても渡らない超慎重な息子は、もちろんまだ決断することはありませんが、自分で踏み出した大きな一歩を讃えたいです。
    腹を括って待ちます。応援しています。
    先生の優しさに感謝です。

  • P先生、いつも拝読させて頂いてます。ありがとうございます。

    今回のいい対応でも悪い対応でも子供が動くときには動く。子供が自発的に動く事に応援するのが親。

    いいお話です。とっても納得します。
    色々勉強して何かいい対応なのか、これが間違ってたから今なのか。っとビクビクして子供と対峙したりしてましたがどんな対応でも好転する時は上手く行くんですよね。

    現在高二男子で8月末から通信学校へ転校します。
    笑顔で応援できるように頑張ります!

  • 腹を括って待つ。
    何にも変わらないと思っても、さなぎはさなぎの中で何か変わろうとしてるんですよね。

    時々つんつんしたくなったり、死んでないか確かめたくなりますが、

    その時を待ちたいと思います。
    今日のお話はとても響きました。

    いつもありがとうございます。

    • そうですよね。
      いつ動くかは本人が決めるしかないんですよね。

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