Categories: 心理学

やりたいことは、なんですか? 〜メディア依存に対する考え〜

外来診療にて。

 

「苦手なところではなく、得意なことを伸ばしていってください。」

 

この子には得意なことなんてないんです。。。

 

とか、

 

「おうちで好きなことや趣味をして過ごして。」

 

男の子
やりたいことは特にないんです。。

 

とか。

 

今日はそんな話。

子育ての極意。

定型発達児でもそうだが、発達の凸凹や発達障害のある子は特に、『得意を伸ばす』だと思う。

 

苦手な教科を伸ばすのは、しんどいだけでなかなか効果が上がらない。

好きな科目を一生懸命やって、自己肯定感を上げるほうがずっと良い。

 

自己肯定感上がる

夢や目標がみつかる

実現に必要なら、苦手な科目にも取り組む

 

この流れ。

時がくれば、苦手なこと、嫌なことにも取り組む。

逆に言うと時が来なければ嫌なことはやらないし、身につかない。

できないと怒られるし、自己肯定感が下がる。

 

自己肯定感下がる

自分なんてどうせ何をしたってダメだ

目標が見つからない

何もしない

何もできるようにならない

 

この流れ。

だから僕は、算数が嫌いな子にも、お片づけが苦手な子にも、朝起きられない子にも、漢字が覚えられない子にも、無理してやらなくていいと伝えている。(車道に飛び出すとか危険なことは除く)

 

それより、好きなこと、得意なことに熱中してほしい。

死んだ魚のような目で嫌なことに耐えるなんて、時間の無駄。

大人から見るとどんなにくだらなくても、目をキラキラさせて何かに取り組む方がずっといい。

 

 

こう伝えると、

「でもこの子、得意なことなんて何もないんです。

 放っておくとずっとゲームとYouTubeなんです。」

と言われることがよくある。

 

 

 

本当にないの?

好きなこと。

 

ゲームと動画視聴は、言われなくてもするんでしょう?

それでいいじゃないですか。

 

目の前にあった手軽な娯楽がゲームだった。

入り口はそれでよい。

まず集中してやってみればよい。

 

 

反論がたくさん出そうですね。

ここから大事なことを言うのでよく聞いて。

 

集中すると、飽きる。

子供が勝手に飽きるのだ。

親御さんは、こんなくだらないこといつまでやっているのかと不安になるでしょう?

熱中してやってみると、存外早くに飽きる。

気づくと別のことに手を出し始めている。

 

 

これ本当。

 

でもうちの子は放っておくといつまででもゲームしてます。

先日ついにスマホを取り上げました。

 

違うのだ。

制限したり、取り上げたりするでしょう?

許可された時間内でも、親の不安から「宿題は終わったの?」「もういい加減にやめなさいよ」なんて小言を言っていませんか?

 

 

すると子供は熱中できないのだ。

うるせーなーと、内心親へのイライラを抱えながら、ゲームをしている。

ゲームに集中できない。

子供はイライラと向き合いたくなくて(だって口答えしたら10倍になって返ってくるし)、他のことで頭を埋めるほうが楽だ。

その目的で漫然とゲームし続ける。(この状態でも親からはゲームに熱中しているように見える)

すると、飽きない。

親に余計に小言を言われる。

もっとゲームに逃げる。

 

親へのイライラと向き合うより、なんとなくゲームをしているほうが楽だ。

ゲームや動画やネットって、受け身なメディアで、楽なのだ。

 

 

楽というのは人間の行動原理の中でも非常に強く、大きい。

現実世界と向き合うのを避けるためにメディアで頭をいっぱいにする。

メディアは優しいから。

文句を言ってこないから。

 

 

徐々に判断力が低下し、何も考えられなくなる。

メディアがないと不安でたまらない。

いわゆる『中毒』となる。

これがメディア依存の成り立ちだと思う。

巷でよく言われるメディア依存はこの中毒状態をさし、脳がどんな状態かを説明する。

もちろん中毒としての治療が必要となるのだが、僕個人としてはメディア依存という結果より、そうなってしまった原因が大事だと思っている。

 

現実から逃げないとやってられない理由があったはずなのだ。

そうしないと、自分を保てなかったのだ。(結果メディア依存のせいで余計に自分を保てなくなっているのだけれど。)

 

 

こうなったらもう遅い。

スマホを取り上げても、別の何かに依存するだけだ。

 

次は何か。

テレビ、SNS、アイドル、非行、窃盗、酒、タバコ、薬物、性、自傷……。

親御さんはそこまで見越して接しているだろうか。

目の前にあるぱっと見楽しそうなことにのめり込む。

素晴らしいじゃないですか。

 

やってみて合わなければ、飽きてやめる。

なんて健全。

やりたいことなんて、それで十分だと思う。

 

 

 

ところで、お子さんの『やりたくないこと』って知ってます?

やりたいことは分からなくても、やりたくないことなら言える子は多い。

絶対やりたくないことをピックアップして、消去していく。

残ったことは、その人にとって「やってもいいこと」なのだ。

 

消去法でよい。

その残ったものの中から、本当に熱中できるものが見つかることは多い。

 

すると『やりたくないけどやらなくちゃいけないこと』も自分からやるようになる。

「コレ」という情熱がなくても、まぁこれならやってもいいかなーと妥協できるところはあるはずだ。

続ければその道の第一人者になる。

やりたいことは、やってみる。

やりたくないことは、堂々と拒否する。

 

それでよい。

 

小さなことから大きなことまで、それでよいと思う。

自分が納得して選ぶことが何より重要。

消去法で選んだ道が、その人の人生になっていくのだ。

その道は一人ひとりかけがえがなく、尊い。

自信を持ってほしい。

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