Categories: 親子関係

子供が自分を犠牲にするとき

お子さんに問題があったとき、どの程度手を貸しますか?

 

明日の学校の準備は手伝います?

夏休みの宿題、ほぼほぼ『お母さん作』になります?

登校をしぶる子に付き添い登校しますか?

 

 

不登校になったら病院やカウンセリングを探してきて、付き添って受診して、母は母でペアレントトレーニングも受けて。

母の愛なのは承知だ。

心配で心配でたまらないのも承知。

 

でも、やりすぎると逆にうまくいかなくなるケースがあるのを知ってほしい。

 

こんな子がいました

登校しぶりの女の子。

行ったり行かなかったり、五月雨登校だ。

朝起きる起きない、学校に行く行かない、先生への連絡は自分でするしない……。

毎朝、母と子の戦いを繰り広げている。

 

 

外来受診の日、お母さんが僕に言った。

 

私、仕事をやめました。

 

僕はびっくり。

だってその子は6年生。

留守番も学校への連絡も、自分でできる年齢だ。

母がベッタリ在宅している必要はない。

 

でもこんな状態がいつまで続くか分からないし、職場にも悪いので。

 

その日を境に、母の小言に「あんたのせいで仕事を辞めたから、うちにはお金がない」が加わった。

 

 

状況が落ち着いたら復職するものと僕は考えていたが、このお母さんは一向に仕事を再開しなかった。

完全に不登校になり、毎日安定して自宅にいたときも。

進学し、心機一転毎日登校し始めたあとも。

 

その後どうなった?

中学生になり、この子は頑張って登校していた。

でも不登校を経験した子なので、やっぱり調子に波はある。

週に数回休んでしまうこともぼちぼちあった。

 

また休んで!

不登校に戻ったら心配心配心配……。

 

一度不登校を経験しているので、母の心配は理解できる。

なので学校であった出来事を逐一確認し、頭痛があると言っては病院に連絡、トラブルがあれば母が出て行って先生や相手の親御さんに意見し……。

 

 

この子、この後どうなったと思います?

 

 

また五月雨登校に戻ったのだ。

あんなに悩んだのに。

自分の中でふっきれて、中学に進学し、友達もできて楽しく過ごしていたのに。

 

一体どうして?

 

 

不登校に戻った『理由』

想像するに、母の役割を奪わないためなのだろう。

 

この子は多分、楽しく登校できたはずの子だ。

たくさん傷つき、悩んで、ふっきれた。

苦手だった自己主張も少しずつできるようになった。

自分で道を切り開く力のある子。

 

 

でも自分が問題なく登校を続けると、母の立場がなくなってしまう。

子供のために東奔西走、『子供の世話で忙しい母』という立ち位置が、家庭内でも確立している。

 

もし自分が問題なく登校したら、母はどうなるんだろう?

燃え尽き症候群になってしまうのではないか。

子供の世話という大義名分がなくなり、父との力関係も崩れるのでは?

 

この子は、そんな風に考えたのではないか。

母に気を使い、『問題児』を演じ続ける。

世話を焼かせることで、「世話を焼く人」という仕事を母に与えている。

 

 

子供って優しい。

時に残酷なくらい。

 

 

お母さんに気を使うがゆえに、こんな残酷なことをする。

世話を焼いてくれるお母さんと、世話を焼かせてあげる自分。

共依存の関係が出来上がる。

 

本来この子は、新しい環境で生き生き生活できたはずなのに。

自分を犠牲にして母に尽くしているのだ。

 

お母さんが人生を楽しむ

お母さんにお願いです。

世話を焼くのはいい。

心配するのもわかる。

でも、『お母さんの人生』を犠牲にしないでください。

 

お母さん自身の楽しみ、仕事、考え方、人間関係。

お母さんの人生だ。

お母さんのそれらが主役であってほしい。

 

 

子供は親とは別人格。

同時に、親も子供とは別人格。

当たり前だけど、別の人なんだ。

 

 

そして子供が人生につまずいている時こそ、お母さんが人生を楽しんでほしい。

お母さんの様子を、子供はよく見ている。

お母さんを通して外の世界を見ている。

 

お母さんが楽しそうにしていれば、子供も自然と外に興味を持つ。

世界が優しいと思えれば、子供は外に出て行く。

 

一番身近なロールモデルが親御さんだ。

特に不登校の子は、家族以外から外の世界の様子を知る術がないのだ。

 

 

老婆心ながら、お母さんの生活のすべてが『子供』に支配されていないといいな、と思う。

子供と離れた一人の人格としての楽しみがあるといい。

お母さんが生き生き楽しく過ごしてくれているといいな、と本当に思う。

pediatrician-p

View Comments

  • “お母さんの生活のすべてが『子供』に支配されていないといいな、と思う”

    まさに子ども中心でした‼️

    親が勝手に産んだんだから当然、自分を犠牲にしても子ども第一にって思ってました。

    年少で集団行動が出来ない、って散々先生に言われ。
    年中でも話を聞いて無いようだ、お母さんがそう思うなら早く発達相談へ行ったほうが良い、と言われ。
    年長では、お漏らしが毎日あり医療機関へ行ったらどうか、発達診断はどうだったのか、診断が出ればこちらも対応できると言われ。

    そして、
    診断結果のadhdと伝えても、対応変わらず…
    こちらの要望にも答えてもらえず…(断る権利?)

    3月生まれだから、ある程度仕方ないのでは?昨年より良くなりましたよね?と先生に言っても、『他の子は早生まれでも、もっと出来てますよ』と言われ。

    保育園の先生がペリーでした…

    母は心折れました…

    だから、自分の事は後回し。色んなことが心配で子ども中心になりました。

  • 先生❗️
    ここまで追いかけてきました😊

    メカ音痴で、息子に教わりながら😁

    先生❗️
    これからも、ブログ
    楽しみに楽しみに拝見します✨

    模写もします😁

    そして、学びます✨

    息子三人の幸せの為に✨

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