小6女児です。
泣いて喚いて、絶対に学校に行かないと。
今日も病院に連れてこようと思ったんですけど、来なくて。
もう大暴れして大変で!
いつから不登校なんですか?
そう、3週間前といえば修学旅行があって、帰宅したときに表情が暗くて。
クラスに折り合いの悪い子がいるのできっと何か言われたんだと思うんですだって……(以下母の推察が続く)
お子さんは何か言ってます?
少し前に文房具の貸し借りからトラブルになったみたいで、LINEで○○って書いてあったのを私が見て、きっとそれは△△っていう意味で……(以下母の推察が続く)
……
受診のタイミングってあると思う。
今日は、どんなタイミングで何を期待して受診すると効果的かという話。
医者って何を考えて診療しているかという話。
お子さんに何かトラブルが起きた。
すぐ病院に行く? 少し様子をみる?
その判断をするのは親御さんの役目だ。
何かあると「すぐ病院へ!」と駆け込んでくる方は、案外多い。
普通の病気(例えば発熱)でも、発症30分くらいで受診される方がいる。
受診することは構わないのだが、発症30分くらいでは正直なんの診断もつかない。
では解熱剤を処方しますね、としか言えない。
患者の状態を一目見ただけで正確な診断を下すことは、現在の医学では不可能だ。
その後にどんな症状が出てくるか観察しないことには、なんとも言えないのだ。
発達外来でも同様で、「こどもがこんな状態です!」と飛び込んで来られても、正直どうともできない。
僕の外来では、患者さん8割:僕2割 くらいで喋るように意識している。
初診では9割:1割 くらいだ。
誰かに聞いてもらうだけで不安が軽くなることは分かっているつもりだ。
トラブルが起きた直後は、「どうしようどうしよう困った困った」でいっぱいで、建設的な対処法なんて考えられない時期がある。
それも分かっているので、まず傾聴するようにしている。
そんな不安を聞いてくれる人って身近にいないことも多いだろうし。
それでも。
数回目の受診でも、推察に継ぐ推察でひたすら喋りまくる親御さんがいる。
勝手な推測から不安になって、不安からまた推測して。
お子さん本人や学校には確認をとらない。
僕も人間だ。
こういう患者さんには、正直疲れてしまう。
一応専門家としてたくさんの子供たちをみており、親御さんの話から子供の気持ちが透けて見えることもよくある。
それを伝えようとするのだけど、入らない。
こうしてみてはとやんわりアドバイスしても、入らない。
不安がっていないで、その情報が真実なのかまず本人に確認してくださいと言うのだが、まあ入らない。
聞く耳を持たないのだ。
親御さんの思う世界が全てで、それ以外の意見は耳に入らない。
気持ちは大変よくわかる。
不安なのだ。
どうしようもなく不安なのだ。
でも、せっかく目の前に専門家がいるのだ。
そいつが持っている知識を上手に引き出してほしい。
診断書を書かせたり、地域の機関に繋いでもらうこともできる。
うまく使ってほしいのだ。
目の前の現実が答えだと、僕は思う。
そのお子さんに対し、親御さんの思うように接してきた結果、今の状態なのだ。
問題があるから受診しているのでしょう。
それが答えだ。
ならば接し方を変える方が、勝率は高い。
お子さんの性質は変わらない。
その性質を分析し、親が接し方を変える。
そうすれば子供の行動は変わるだろう。
親御さんだけで遂行するのは難しいからこそ、(自分と自分の子供しか知らないのだから、特性に気づくのは難しい。当然だ。)他人の頭脳と手を使ってほしい。
医師や保健師、カウンセラー、教員など、使える人材はある。
今はよい時代になっており、子供のトラブルを扱う地域の機関も結構ある。
他者の視点から見ると解決策が浮き出てくることはよくある。
というわけで。
長い予約待ちの期間を経てせっかく受診するのだから、医者をうまく使って欲しい。
何に困っていて、どんなアドバイスがほしいのか。
どんなことなら実行可能で、どこは譲れないのか。
何が不安で、解消するために必要な情報は何か。
このあたりがクリアだと、医者は(きっと他の職種も)持てる知識をフル稼動して親身に考えてくれる。
医者って頼られると張り切って答えようとする、扱いやすい人種ですヨ。
子育てって、親だけで頑張る必要はないと思う。
他者に頼っていいし、意見は柔軟に取り入れてみて欲しい。
うまくいかなければまた考えたらよい。
大丈夫、みんな結構優しい。
みんな親身になってくれる。
そしてそうやって試行錯誤している親の姿を、子供はよく見ている。
何か感じ取ることがあるようですよ。