前回の続き。
先日こんな話を聞いた。
HSCは、他の世界が『入ってくる』感じ。
ヒーロー映画をみたらしばらく余韻に浸ってヒーローになった妄想をするけど、「自分は自分」という感覚は失わない。
自分がヒーロー役を演じている感覚。
ASDは、その世界に『行ってしまう』。
自分自身がヒーローになってしまい、現実世界の自分はいなくなる。
どちらも影響を受けやすい(自他境界が薄い)のだけれど、影響の受け方が異なる。
なるほど、と思った。
ASDって確かに『自分』という概念が薄いと感じていた。
自分(と相手)なんてどうでもよくて、こだわりの対象物が全て。
「自分が働きかけた結果これが動いた」という因果関係に興味がなくて、
「これが動いている」という事実のみにフォーカスする印象。
対してHSCは、自分と対象物の区別はあるが、境界が薄くて混じりやすい印象。
HSCは「卵がしみてフレンチトーストになっているけど、オレは元々パン!」という自覚がある。
でもASDは「この世の全てはフレンチトースト!」(材料であるパンや卵は消失。オレという概念も消失。)になってしまう感じ。
余談だが、不登校対応でも
HSCは「こうするべき」という思考が染み込んではいるが、丁寧に分離すれば『本人の本音』が掘り起こせる印象。
一方ASDは「自分はこうしたい」という思いがあまりなくて、「これはイヤ」を列挙して避けていく、消去法のイメージ。
だからHSCは、空気を読むベクトル(矢印)が合っている。
自分と相手、という位置関係があるから。
空気を読みすぎて変になることは多々あるが、とりあえず方向性は合ってる。
その点ASDは、ベクトルがずれている。
目標物、というただ1点しかないから、方向が定まらず相手からずれてしまう。
そんな風に、今は考えている。
※もちろん程度問題です。スペクトラムの薄いASDは自分と他人の意識があります(薄いけど)。
だから一応、外来では気遣いのベクトルが合っているかどうかで区別することにしている。
この図を見て欲しい。
自分から相手に発する気遣いを赤い矢印で示す。
相手の欲しいところに気遣いがぴったり到達した、この図が100点満点の気遣いとする。(左右の薄い線は、気遣いの方向性の許容限界ライン)
HSCは、こんなイメージ。
↑方向は合っているが、気を遣いすぎて過剰になっているとか。
↑余計な気をつかって方向と距離がややズレてるけど許容範囲とか。
↑方向は合ってるけど、余計な心配をしすぎて(迷惑かも…とか)、ちゃんと表現できてない。
対してASDは、自分という出発点がないので方向も大きさも定まらない。
↑周囲からみたらこんな感じ。気遣いの暴投。
※もちろん、偶然正解することもある。目を瞑って投げてもストライクになることがあるように。
あと、幼児期のエピソード。
小〜中学生になると、
空気が読めないことに気づいて気を使うASDもいるし、
空気を読みすぎて疲れてしまい、あえて空気を読まないよう努めるHSCもいる。
この両者を区別するのは非常に難しい。
なので、幼児期(3歳前後くらい)のエピソードを参考にする。
周囲に興味がなく自分の世界に没頭するのはASDっぽい。
周囲が気になるけど怖くて入れず、自分の世界で遊ぶのが安心・安全な感じだとHSCっぽい。
幼児期は経験から学んだことが少ないので、その人本来の気質が見えやすい。
小学生くらいになると、先天的(持って生まれた気質)か後天的(経験から身につけた知識や技術)か判断しづらい。
以上が、今のところの僕の中での区別。
この説明で理解できます?
書いていて、抽象的すぎて文章化しづらいと感じる。
ふわっとしすぎてボケるところもわからなかったし。
まぁ、僕の興味で一応区別しようとはするが、実際の対応はどちらでも変わらない。
その子の特性をよく見て、その子に合った支援をするのは同じ。
だから厳密に区別する必要はないんだと思う。
両者の合併の可能性まで考え始めるとキリがないし。
あと、知的な遅れが絡む場合なんかはもうサッパリ分からない。
結局、
「この子はASD (HSC)だから」と一括りにするのではなく、その子の持ったものを丁寧に見てあげること
だと思う。
これでファイナルアンサーなのは、今後どんな見解を持ったとしても変わらないだろう。
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不登校の次男について、通信制高校の先生に機会があれば発達障害のテストを受けてみたらと言われました。
長男がADHDの診断を受けていて、彼は時間の軸が他人とずれてるなと思うことが多々ありますが、次男は時間や日数も気にするし、他人と常に比べて現実世界を意識してるような気がするので、なんとなく違うような気がしていました。
学校の先生に言われて違和感を感じつつ、こちらのコラムにたどりつきました。やはりうちのはASDというよりはどちらかというとHSDのような...?はっきりした境界線はないのでしょうけれど。
長男を見てきた経験から、テストを受けて診断名がついたら楽になるとも簡単には思わないのでしばらく様子見です。
先生のコラムはいつも色々参考にさせていただいています。ありがとうございます。
深夜に失礼します。
いつも先生の楽しい文面に救われながら拝見しています。
我が家の子どもたちがまさにここに当てはまります。
娘 HSC 不登校中
息子 ASD(多分)若干気を使うタイプ。
どちらも友達の輪に入れず不便でなりません…
どう対応したらいいのか親としても勉強の日々です。
受診が必要かどうか迷います。二次障害になってから駆け込んでも、半年近く待つのでしょうか…
受診の仕組みや待ち時間については、地域や病院で大きく異なるようです。
受診して何を知りたいか、まずはまとめていただけるとよいかと存じます。