「子供の発達が気になる」
「学校で暴れたらしく、受診するよう言われた」
「受診を反対していたパパの同意がやっと得られた」
「急に不登校になった!」
子供に何らかの気になる点があり、病院を受診しようと決めた。
予約の電話をして……、ってゆーか発達外来ってどこにあるの? そもそも何科?
精神科(心療内科)は……18歳以上だって。
児童精神科はみつからない。
近所の小児科に電話したら、ウチでは診られないから大きい病院へって言われた。
大きい病院……街の総合病院を調べる。
あった! 思春期科とかこころの外来とか、そんな名前なのね。
OK牧場、じゃあ電話して……。
え⁉︎ 初診まで6ヶ月待ちですって? 冗談はよしこさん!
だいぶ昭和なお母さんを例に出したが、発達外来を受診する時点で大きな覚悟があることは僕たちもよく分かっている。
なのに、出鼻をくじかれる。
なんですぐに診てくれないの!
わかる。すごくわかる。
僕もそう思っていた。
せっかく予約の電話をかけてきてくれたのだから、すぐに診ればいいのにって。
そもそもなぜ発達外来(に類する外来)には待ち時間が生じるかというと、一番は需要と供給のアンバランス。
受診したい方はたくさんいる。
近年特に増えているようだ。
でも、この分野を専門にしている医者は少ない。
大きめの病院でも1人いれば御の字。
専門外の医者は、扱いたがらないことも多い分野だ。
専門性が高い、時間がかかる、儲からない、向かない医者は本当に向かない(診るとつらくなってしまう医者は結構いるようだ)……などの理由があり、診ない医者を責める気には僕はなれない。
かなり特殊な分野だと思う。
僕の外来も、予約枠を開けると一瞬で埋まる。
ありがたいことではあるのだが。
予約満了後も鳴り止まない電話が申し訳なくて、枠を増やす方向で模索したことがある。
発達外来にこれだけの需要があるのだ。
健診や予防接種を開業医さんにお願いし、その分予約の枠を増やしてはどうか。
そんな風に考えた。
でも現状、予約枠は増やしていない。
なぜか。
予約待ちの数ヶ月に意味があるという結論に至ったから。
受診しようと思い立ってすぐに来院すると、親御さんがパニック状態のことがままある。
目の前の出来事や子供の状態に混乱し、状況把握ができていないことがあるのだ。
これは無理のないことだと思う。
親御さんは教育方針や考えがあって、ここまで子育てされてきた。
時間を共にし愛情をかけた、大事なお子さんだ。
予想しないことが起きたら、驚き、パニックになる。
すぐには受け入れられない。
悪いことを受け入れるには段階を踏む必要があるらしい。
まず『否認』。
そんなことはあり得ない、なにかの間違いだと思う。
次に『怒り』。
学校の先生がウチの子ばかり悪く見るとか、悪い友達にそそのかされたに違いない! とか。
原因を探し、怒ることで不都合な現実から目を背ける。
その後『落ち込み』、やっと『受け入れる』。
大雑把にこんなような段階があるそうだ。
で、『否認』や『怒り』の段階で来院されても、正直いかんともしがたい。
大事なお子さんのことなので、親御さんも必死だ。
それはわかる。
でも、これでは先に進まない。
まず親御さんの思うようにやってみる時間が必要なのだろう。
お子さんを叱り飛ばしてみたり、叱咤激励したり、泣き落としを試したり。
ママ友に相談するのは『否認』の段階だろう。
大丈夫と言ってほしい、安心したいのだろう。
お察しの通り、これらを試してもまずうまくいかない。
これでうまくいくなら、今こんなことになっていない。
目の前のお子さんが答えだ。
方法を変える必要がある。
親御さんが行動を変える。
何が相談したいのか、相談の結果がどうだったらどう行動するのか、事前に決めてきてほしいのだ。
腹をくくって受診していただく方が、効果が大きい。
親御さんが腹をくくると、その時点で問題の半分は解決したようなものだと思う。
その方針で、まず正しい。
あとは好転していくしかない。
家族の力で改善していくのを、僕は横で見ているだけ。
見ているだけでマジで何もしていないので、ぶっちゃけ給料泥棒だと思うけど病院にはナイショ。(クビにしないで!)
初診までの6ヶ月は、親御さんが腹をくくるための準備期間だと思っている。
そして腹をくくってしまえば、次にするべきことは自ずと見えてくる。
僕はただ傾聴し、太鼓判を押すだけ。
そしてこんな家族は強い。
今後どんなことがあってもこの一家は安泰だろうなぁと思う。
そんなわけで、予約枠は増やしていないので現状6ヶ月待ちです。
(とは言っても結構みてますよ。がんばってます!)