不登校とまではいかないけど学校がしんどくなってきた子。
教室に長時間滞在すると、お腹が痛くなる……。
トイレに行きたいけど、授業中に
「先生トイレ!!!」
なんて言えない。
でも我慢して、みんなの前でオナラが出ちゃったりしたら私の人生終わるし……。
腹痛と焦りで脂汗ダラダラ。
顔面蒼白。
どうしましょう。
「先生……、保健室に行っていいですか……?」
内気なこの子がなんとか絞り出せるのはこの言葉ではないでしょうか。
あゝ保健室。
小中学生の心(と身体)のオアシス……!
実際僕の外来でも、体調不良時や気持ちがいっぱいいっぱいになったときに保健室を利用する子は多い。
保健室登校している子もいる。
教室か不登校か、すなわち全か無かではなく、中間に保健室登校という選択肢があると非常に気が楽。
五月雨登校の子も、登校したらまず保健室でワンクッション置いて、落ち着いてから教室に入ったり。
過敏性腸症候群や頭痛持ちの子も、とりあえず登校してダメだったら保健室に行けばいいと思うと気が楽になり、
腹痛や頭痛の頻度も減る。
保健室に逃げ込むと、保健の先生が優しく迎え入れてくれて。
女神がここに……!
保健室ってすばらしい。
お世話になります保健室。
僕の中で保健室ってそんなイメージだったのだけれど。
僕の住む地域だけかもしれないが、「保健室に滞在できるのは2時間まで」という規則があるらしい。
調子が悪ければ保健室に行っていいけど、2時間以内に「教室に戻るor帰宅する」の選択をするように、と。
心のオアシスに時間制限ができてしまった!
大ショック!!!
僕は学校関係者ではないし、なんの力もないので、ただのつぶやきでしかないのだが、
もう少し甘やかしてくれてもいいんじゃないのかな、ケチ。。。
純粋な身体疾患(怪我とかアレルギーとか熱が出たとか)なら、2時間もかからず決着がつくと思う。
でもそうじゃない子。
教室がしんどくなって逃げてきた子。
この子たちに時間制限はキツイ。
休みに来たのに休まらない。
「今日は教室に戻るのか、帰宅するのか、どうしようか……」
保健室に入った瞬間からタイマーが押される。
ベッドの中で2時間、モンモンと考え続ける。
「ホントは自分のタイミングで決めたいのに!」
起立性調節障害やそれに伴う頭痛、過敏性腸症候群なんかでは、
「今ならいけるっ!」
と思う瞬間がある。
その瞬間にえいやっと教室に戻ると、案外そのまま頑張れたりする。
でも自分のタイミングじゃないときに強制されると、輪をかけて体調が悪くなったり。
登校しぶりや不登校の子。
この子たちにとって、教室でも自宅でもない『保健室』という選択肢は非常に魅力的だ。
教室に入るのは無理でも、他の生徒のいない保健室ならハードルが低い。
一応保健室に登校しており、完全な欠席ではないので、少し安心する。
出席日数的にもおトク。
自己肯定感もちょっと上がる。
保健室という逃げ場があれば、今日は教室に入ってみようかなと思えたり。
一度教室に入れると、以降のハードルは飛躍的に下がる。
子供の側から見ると、メリットばっかりなんですよね。
冒頭の内気なあの子、保健室は2時間までって言われたら
「じゃあ学校に行かない! お腹痛くなったら怖いもん!」
なんて言い出しかねないと思うが、杞憂でしょうか。
「先生トイレ!」
「先生はトイレじゃありません!」
お約束のこのやりとり、あの子にできるかな。。。
先生の懸念されることもわかる。
長時間の保健室滞在を許すと、そのままダラダラ居座る子が出てくる。
少し休んだら教室に戻ってほしい。
勉強も遅れるし、他の生徒との兼ね合いもあるし、次に使う子が入りづらいし。
それが無理なくらい体調が悪いのなら、家に帰ってゆっくり休むべきだし。
いずれにしろどっちつかずでダラダラ過ごすのは、この子のために良くない!
きっとそのようにお考えなのでしょう。
そこは教育現場のことなので、僕は口を挟めないし挟む資格なんてないのだけれど。
でも保健室。
優しい先生と消毒の匂い。
空調の効いた部屋にふかふかのベッド。
窓から差し込む光、風に揺れるカーテン。
あゝ保健室。
学校の中にありながら、夢の中のような異質な空間。
仮病ってわかった上で子供たちを受け入れてくれる保健の先生。
教室という現実世界とは、別の次元にあるような……。
そんな存在であって欲しいと思うのは、僕の憧れか。
あゝ保健室。
偉大なる保健室よ。